身体の側の性を指す語。社会的に構築された性役割を意味するジェンダーと対にして使われ、こちらは自然が定めた動かしがたい事実、と受け取られることが多い。

だが、何をもってセックスを決めるのかを具体的に見ていくと、話はそう単純ではない。指標は一つではなく、性染色体、性腺(卵巣・精巣)、内性器、外性器、ホルモンの状態、思春期に現れる二次性徴と、いくつも並ぶ。多くの人ではこれらが同じ方向を指すため、ひとまとまりの「男」「女」として扱って支障がない。しかし常に一致するとはかぎらない。染色体はXYだが外性器は女性型に発達する、といった組み合わせは実際に存在する。DSDs(体の性の様々な発達)と呼ばれてきた状態がそれにあたる。

つまりセックスは、一つの決定的な線ではなく、複数の指標の束である。出生時に外性器の見た目で振り分けられ、それが戸籍に記載されて一生ついてまわるという手続き自体は、束のうちの一つを代表として選び取る操作にすぎない。

自然が二つに分けたものを社会が受け取っている、という順序も、ほんとうにそうなのかどうか。セックスの側にも、線の引き方をめぐる人の手が入っている。

→ ジェンダー/DSDs/本質主義・構築主義/性的指向

参考文献

  • 周司あきら・高井ゆと里『トランスジェンダー入門』(集英社新書、2023年)
  • ジェンダー事典編集委員会編『ジェンダー事典』(丸善出版、2024年)「インターセックス/性分化疾患」の項
  • 佐藤文香監修、一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同著『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた』(明石書店、2019年)

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