Glossary

DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)は、組織や社会の中で多様性を尊重し、全ての人々が公平かつ包括的に扱われることを目指す理念です。特に「エクイティ(Equity)」に焦点を当てて、フェミニズム的な視点から解説すると、次のような観点が重要になります。

1. エクイティとは何か

エクイティは「公平性」を意味しますが、ここでの「公平」とは、全員が同じ支援やリソースを得ることではなく、個々の状況や背景に応じて必要な支援やリソースが異なることを認識し、それに基づいて適切なサポートを提供することを指します。例えば、男女間の賃金格差がある場合、平等(Equality)であれば全員に同じ給料を与えることを意味しますが、エクイティでは、女性に対して追加の支援を行い、賃金格差を縮める措置を取ることを含みます。

2. フェミニズムの視点からのエクイティ

フェミニズムの視点から見ると、エクイティはジェンダーの不平等を是正するための重要な手段です。歴史的に、女性や性的少数者は労働市場や教育機会で不利な立場に置かれてきました。フェミニズム運動は、こうした不平等に対抗し、特に構造的な差別や偏見を明らかにし、それに対する制度的な対策を求めてきました。

  • ジェンダー賃金格差
    女性は多くの国で同じ仕事をしていても男性よりも低賃金であることが多いです。この不公平を解消するため、女性に対する賃金調整やリーダーシップ研修、育児支援など、特定の支援が必要となります。エクイティの概念は、女性が平等な報酬を得られるために、個別に必要な支援を提供することを強調します。
  • 女性のリーダーシップ支援
    多くの組織で、女性が管理職やリーダーシップポジションに少ないという問題があります。フェミニズム的視点では、この状況を変えるために、女性がキャリアを進めやすくするような政策、たとえば、育児と仕事の両立をサポートするフレキシブルな働き方の提供や、昇進の機会を意図的に増やすことがエクイティの一環とされています。

3. 交差性(インターセクショナリティ)の視点

エクイティを議論する際に、フェミニズムはしばしば「交差性(インターセクショナリティ)」という概念に注目します。これは、人々がジェンダーだけでなく、年齢、人種、性的指向、障害など複数のアイデンティティによって異なる形で不平等を経験するという考え方です。

たとえば、黒人女性は、白人女性や黒人男性とは異なる差別の形に直面します。フェミニズム的なエクイティのアプローチでは、このような複雑な不平等を理解し、特定のグループに対して適切な支援を提供する必要があると強調します。

4. エクイティと構造的変革

エクイティは単に一時的な支援策だけでなく、社会の構造自体を変えることを求めます。フェミニズムは、性差別やジェンダー不平等が制度的・文化的に根付いているため、エクイティを達成するためには法的、教育的、経済的な仕組みを変える必要があると主張します。具体的には、ジェンダーに関するバイアスを持つ教育やメディアの改善、平等な賃金法の強化、リーダーシップにおける多様性の確保などが含まれます。

5. 実際の取り組み

フェミニズム的なエクイティの取り組みの例として、ジェンダーに関するアンコンシャスバイアスのトレーニングや、女性のためのメンタリングプログラム、育児支援制度の拡充などが挙げられます。これらの取り組みは、女性が職場で平等な機会を得られるようにし、歴史的に積み重ねられてきた不平等を解消するための一歩となります。

結論

フェミニズムの視点から見るエクイティは、単に「同じ扱い」を求めるものではなく、個々の状況に応じた支援や機会の提供を通じて、すべての人が真の公平を実現できるようにすることを目指します。それは、構造的なジェンダー不平等に挑戦し、包括的かつ持続可能な変革を追求するアプローチです。

事例

エクイティの実践に注力している企業はいくつか存在します。特に大手企業の多くがDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に力を入れており、ジェンダー平等やエクイティに関する具体的な施策を打ち出しています。以下は、エクイティをフェミニズム的な視点で実践している代表的な企業の例です。

1. アクセンチュア (Accenture)

アクセンチュアは、ジェンダーエクイティに対して強いコミットメントを持つグローバルなコンサルティング会社です。アクセンチュアは、女性がリーダーシップポジションに進むためのプログラムを提供しており、2025年までに全従業員の50%を女性にする目標を掲げています。また、インクルージョン&ダイバーシティの一環として、ジェンダーに関するアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)のトレーニングを導入し、エクイティを実現するための文化づくりにも積極的に取り組んでいます。

2. ユニリーバ (Unilever)

ユニリーバは、ジェンダーエクイティに関するリーダー企業の一つです。2020年において、世界中の管理職における女性比率が50%に達しており、特にエクイティを意識した人材育成や昇進プロセスが整備されています。また、職場での育児サポートやフレキシブルな働き方を奨励し、育児中の女性のキャリア継続を支援するエクイティの取り組みを実践しています。

3. マイクロソフト (Microsoft)

マイクロソフトは、DE&Iの取り組みの一環としてエクイティを推進しています。特に、女性やマイノリティに対する技術分野でのキャリア支援を強化しています。マイクロソフトは、STEM(科学、技術、工学、数学)分野における女性の参入を促進するための教育プログラムや、女性リーダーシップの育成プログラムを展開しています。これらの取り組みは、性別による不平等を解消し、女性のキャリアアップを支援するためのエクイティを実現するものです。

4. シェル (Shell)

エネルギー企業のシェルは、女性のリーダーシップ育成を支援し、ジェンダーの多様性を促進するためのプログラムを実施しています。シェルは、DE&Iの戦略に基づいて、女性が平等に機会を得られるようエクイティに基づく施策を採用しており、特に女性が職場で成長しやすい環境づくりに力を入れています。また、育児休暇の拡充や、家庭のケアと仕事を両立できるフレキシブルな制度を提供するなど、働きやすい環境の整備もエクイティ実践の一環としています。

5. パタゴニア (Patagonia)

アウトドアブランドのパタゴニアは、サステナビリティとともに社会的公正にも強いコミットメントを持っています。ジェンダー平等のための施策として、特に女性のキャリア支援や、家族を支援するためのフレキシブルな労働環境を提供しています。パタゴニアでは、全従業員に対して平等な待遇を保証するだけでなく、ジェンダーによる不平等が存在する領域には特別なサポートを提供し、エクイティを実現するための積極的な取り組みを行っています。

6. シスコシステムズ (Cisco Systems)

シスコは、職場におけるジェンダーの平等を実現するために、女性に対するメンタリングプログラムやリーダーシップトレーニングを展開しています。また、リモートワークやフレキシブルな働き方を奨励し、特に育児や家庭のケアを担う女性がキャリアを継続できるようなエクイティ施策に力を入れています。

まとめ

これらの企業は、単に多様性を促進するだけでなく、エクイティの観点から、ジェンダー不平等を是正するために必要な支援や制度を提供しています。フェミニズム的な視点からも、これらの企業の取り組みは、構造的な不平等に対する具体的な解決策として評価されています。特に、ジェンダーに基づくバイアスを除去し、女性やマイノリティが公平な機会を得られるようにするための取り組みが中心となっています。

ZINE

やっぱり進んでるのは外資系大企業なのよね、自分ひとりでやれば公平になる、多様性も受容もいらないって思ってたけど、社会全体がそうじゃないから無理だった。フリーランスでDE&Iを実現するには、社会そのものをそうしなければならないのね。

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