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アファーマティブ・アクションとは

アファーマティブ・アクション(Affirmative Action)は、歴史的または社会的に不利な立場に置かれてきた特定のグループ(例えば、女性、マイノリティ、人種的・民族的少数派など)の平等な機会を促進するために、教育、雇用、またはその他の分野で実施される積極的な措置や政策を指します。この概念は、特にアメリカにおいて、1960年代の公民権運動を背景に発展しました。

アファーマティブ・アクションの目的

  1. 歴史的格差の是正
    人種差別や性差別などの構造的な不平等によって、これまで抑圧されてきた人々の機会を増やし、社会的な平等を進めることを目指します。
  2. 多様性の推進
    学校や職場、社会全体で、多様な視点や背景を持つ人々が集まり協働することにより、革新や文化的理解が進むとされています。
  3. 公平性の確保
    「平等なスタートライン」を提供することで、競争が公平になるよう努めます。

具体的な施策

  • 教育分野
    大学入学の際、特定のマイノリティや女性に対して優遇措置を取る例が挙げられます(アメリカでは「大学のアファーマティブ・アクション政策」が広く知られる)。
  • 雇用分野
    雇用において、企業が積極的にマイノリティの採用を増やすための採用目標やクォータ制を導入する場合があります。
  • 政府契約
    マイノリティ所有の企業に対して、政府契約の割り当てを優先する政策がとられることがあります。

アファーマティブ・アクションとDEI(多様性、公平性、包括性)

アファーマティブ・アクションは、DEI(Diversity, Equity, Inclusion)の概念と密接に関連しています。

  1. 多様性(Diversity)
    アファーマティブ・アクションは、多様性を具体的に実現するための施策です。特に、過小評価されてきたグループの代表性を高めることが目的です。
  2. 公平性(Equity)
    DEIにおける公平性は、平等とは異なり、各個人が必要とするリソースや機会を適切に与えられることを意味します。アファーマティブ・アクションは、この公平性を実現するために「格差の是正」に重点を置きます。
  3. 包括性(Inclusion)
    多様性と公平性を実現しただけでなく、そのような背景を持つ人々が社会の一員として受け入れられ、貢献できる環境を整えることを目指しています。

日本におけるアファーマティブ・アクションの例

日本では、アメリカやインドほど明確なアファーマティブ・アクション政策はありませんが、以下のような取り組みが関連する例として挙げられます。

  1. 女性の社会進出促進
    • 女性活躍推進法(2016年施行)
      企業に対して、女性管理職比率の目標を設定し、その達成状況を公開することを義務づけています。特に大企業では、男女間の賃金格差や昇進格差を是正する努力が求められています。
    • クォータ制の議論
      国会議員や地方議員における女性比率を向上させるために、クォータ制の導入が議論されています。ただし、現状では具体的な法的義務には至っていません。
  2. 障害者雇用
    • 障害者雇用促進法
      企業に一定割合以上の障害者を雇用する義務を課し、その達成状況を監督する仕組みがあります。これを達成できない場合、納付金を支払う制度が設けられています。
  3. 地域間の教育格差是正
    • 地方教育振興策
      地方の過疎地域や経済的困難を抱える家庭の子どもたちに対して、奨学金制度や特別入試枠が提供されています。
    • 大学入試における推薦・地域枠入試
      地方医療を支える目的で、医学部の地域枠推薦が設けられるなど、特定の地域や背景を持つ受験生への支援があります。
  4. 外国人労働者の支援
    • 技能実習生制度の改善
      技能実習生として来日する外国人の労働条件を改善し、差別や搾取を防ぐための規制が強化されています。
    • 多文化共生施策
      地域社会における外国人住民の支援(例:日本語教育や行政サービスの多言語化)も進められています。
  5. 性的マイノリティの支援
    • パートナーシップ制度
      一部の自治体で、同性カップルを家族として認める「パートナーシップ制度」が導入されています。これにより、住居や医療における差別が緩和されつつあります。
    • 企業のLGBTQ+施策
      多くの企業がダイバーシティ推進の一環として、LGBTQ+従業員への支援や雇用環境の整備を進めています。
  6. 高齢者雇用の促進
    • 高年齢者雇用安定法
      高齢者の就業機会を確保するため、定年の延長や再雇用の推進が行われています。これにより、高齢者の社会参加が進み、世代間の多様性が確保されるよう努力されています。

日本における課題

  1. 政策の実効性
    日本では「目標」や「ガイドライン」が多く、法的強制力を伴わないケースが多いため、企業や組織の自主性に委ねられている部分が大きいです。
  2. 逆差別に対する懸念が低い一方で進展も遅い
    アファーマティブ・アクションに対する理解が浸透していないことや、特定のグループを優遇することに対する抵抗感が少ない反面、政策の導入・実行がゆっくりと進む傾向があります。
  3. 意識改革の必要性
    制度や政策以上に、社会全体の意識改革が遅れているという指摘も多いです。特に女性やマイノリティの活躍を阻む無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)の解消が重要です。

まとめ

アファーマティブ・アクションは、歴史的・社会的な不平等を是正し、多様性を推進する重要な政策ですが、適用方法やその影響については慎重な議論が求められます。また、DEIの理念とともに、単なる優遇措置にとどまらない包括的な社会の実現が目指されています。日本においても、関連する施策が部分的に実施されていますが、さらなる意識改革と政策の実効性向上が鍵となっています。

ZINE

トランプ政権になって、企業が、アファーマティブ・アクションや、DEIが取りさげられる流れになっています。アメリカでは、男性白人労働者が、移民によって労働を奪われているという印象操作がありますが、AIやロボットを排斥しようという話はききません。

日本はアメリカとちがって、人口減少によって、女性やマイノリティを労働資源として見る傾向があります。しかしできるだけ安く雇用したい、それが非正規雇用の促進に繋がってしまってるのは悲しいです。

いずれも資本家の都合だけでアファーマティブ・アクションや、DEIを考えるのではなく、優しい社会をつくるために労働の問題を考えて行きたいものです。

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