ZINE
この投稿は、”みなみの雑談ブログ”のnoteとしても公開しています。
いま、私たちが直面している環境問題やジェンダーの課題。その解決に必要なのは、「問い」を立て、それをデザインとして形にしていくことではないでしょうか。このテーマについて考え、SolaとなづけたAIと議論し共著をしてみました。皆さんのご意見もぜひお聞かせください。
問いが今求められている意味
現代の複雑な課題(環境、ジェンダー、資本主義)に直面する中で、なぜ「問い」が重要なのか。
現代社会は、環境問題、ジェンダー不平等、資本主義による格差など、さまざまな複雑な課題に直面しています。これらの課題は互いに絡み合い、一つの要因だけではその本質を説明することができません。私たちはこうした状況の中で、未来をより良い方向へ導くために「問いを立てる」という行為が求められています。
問いを立てることは、現状に疑問を持ち、課題の背後にある構造や価値観を明らかにする行為です。これにより、単なる反応や表面的な解決策を超えた新たな視点を得ることができます。たとえば、環境問題を「消費の削減」とだけ捉えるのではなく、「どのような社会システムが環境への負荷を生んでいるのか」と問い直すことで、本質に近づくことができます。性加害を「男性の欲望と暴力」とだけ捉えるのではなく、「人権問題としての包括的性教育が欠けていたのではないか」と問い直すこともできるでしょう。
問いは、新しい対話を生み出し、解決のための行動を促す力を持っています。それは、単なる疑問ではなく、未来を創造するための出発点です。
問いの役割
1. 現状を批判的に捉える。(問いがSNSによって拡散、増幅される社会)
問いを立てることは、現状を単純に受け入れるのではなく、批判的な視点で見直すことを可能にします。特にSNSでは、情報が瞬時に拡散され、表面的な議論や感情的な反応が優勢になることが多いです。その場の空気で祝祭的な炎上に脊髄反射するのではなく、ではどうやったら解決できるのかを「問う」姿勢が必要です。
このような環境で、問いは議論を深め、短絡的な結論に流されないための武器となります。「なぜこうした状況が生まれたのか?」「何が見落とされているのか?」と問うことで、課題の背景にある複雑な構造を理解する糸口が得られるのです。
2. 問題の本質を見つけ出す。(「やっかいな問題」の本質を見極める)
多くの課題は、見た目以上に複雑で、多層的な要因が絡み合っています。「やっかいな問題」と呼ばれるこれらの課題に対して、問いを立てることは、表面に現れている問題の影に隠れた本質を見つけ出す手段となります。
たとえば、環境問題を「ごみの増加」とだけ見るのではなく、「なぜごみが増える構造が維持されているのか?」と問うことで、制度や価値観の問題が浮き彫りになります。本質に迫る問いがなければ、根本的な解決には至りません。
3. 新しい視点や行動の起点になる。(問いがなければ解決はできない)
問いは、新しい視点を生み出し、行動を促すエネルギーの源でもあります。たとえば、「すべての人が平等にアクセスできる社会とは?」という問いは、従来の不平等な構造を再評価し、解決策を模索するきっかけとなります。
問いがなければ、私たちは固定観念にとらわれたまま停滞してしまいます。問いを通じて得られる新たな視点は、現状を打破し、次のステップに進むための羅針盤となるのです。
2. 持続可能性とジェンダー
持続可能性とは何か?
持続可能性は単に環境問題に留まらず、社会全体の構造や経済の在り方に根本的な問いを投げかける視点です。現代社会では、「持続可能性」という言葉が環境保全を中心に語られることが多いですが、その背後には複雑な相互依存関係が広がっています。これには、資源の分配や経済の公平性、地域社会の復権、そして人々が安心して生きられる仕組みの再構築が含まれます。
• 環境問題だけではない広がり: 持続可能性の概念は、気候変動や生物多様性の危機といった環境問題だけでなく、経済的不平等や社会的排除、労働環境の改善といった課題とも密接に結びついています。持続可能な未来を築くには、社会的・経済的な側面も考慮した包括的な取り組みが求められます。
• 短期的利益と長期的ビジョンの葛藤: 現代の資本主義的な経済モデルは短期的な利益に偏重しがちですが、それは長期的な環境破壊や社会的コストを増大させます。この構造的な問題に立ち向かうには、個人レベルの行動変容だけでなく、政治・経済の仕組みそのものの変革が必要です。
• 未来世代の権利を尊重する視点: 私たちが今日行う決定は、未来の世代がどのような環境で生きるかを決定づけます。「持続可能性」とは、未来世代の生存権や幸福を侵害しない形で、現在の社会を再構築するという倫理的な責任を意味します。
ジェンダーとの交差点
持続可能性の議論には、ジェンダーという視点が欠かせません。持続可能な社会を築くには、すべての人が平等に価値を認められ、抑圧や不平等がない状態を目指す必要があります。その中で、ジェンダー不平等の解消は中心的なテーマです。
• ジェンダー不平等が持続可能性に与える影響: 女性やマイノリティが持つ知識や経験は、持続可能な社会づくりに重要な貢献を果たす可能性があります。しかし、家父長制的な価値観やジェンダーに基づく抑圧が、これらの可能性を閉じ込めています。この状況を変えない限り、持続可能な社会は絵空事のままです。
• 性加害と資本主義的競争: 性加害の多くは、家父長制を温存する資本主義的競争構造の中で発生します。この構造は、他者を支配することや搾取することを正当化し、弱者の声をかき消してしまいます。これを解消するには、家父長制と資本主義の交錯を解きほぐし、新たな価値観をデザインする必要があります。
• ジェンダーを含む多様な視点の統合: 持続可能性を実現するには、女性、LGBTQ+、障がい者、移民など多様な背景を持つ人々の視点を政策や社会設計に取り入れることが不可欠です。これにより、誰一人取り残されない未来を目指せます。
フェミニズム的視点が持続可能性を支える方法
フェミニズムはジェンダー不平等に挑む運動であると同時に、持続可能性を実現するための強力な視点を提供します。フェミニズムの実践は、権力構造を問い直し、より公平で包摂的な社会を目指す上で不可欠なものです。
• ケアの倫理と共生の価値: フェミニズムは、競争よりもケアや共生を重視する価値観を提唱します。持続可能な未来を築くには、他者や環境に配慮し、相互依存を前提とした社会構造を取り入れることが重要です。
• ジェンダー平等が経済・社会に与える波及効果: 女性が教育や雇用の機会を得られる社会は、子どもの健康や教育水準の向上、地域経済の発展にもつながります。フェミニズム的視点を持つことで、持続可能性の実現に必要な包括的な視野を得られます。
• 抗いと変革のデザイン: フェミニズムは、既存の抑圧的な構造に抗うだけでなく、新しい可能性をデザインする力を持っています。家父長制的な価値観に代わる、新しい人間関係や社会構造を共に考えることが、持続可能な社会を生む鍵となります。
持続可能性とジェンダーの交差点は、単なる議論の場ではなく、私たちの未来を築くための実践の場です。この視点から、ジェンダーをデザインし、持続可能性を追求する新たなステージへと進むことが求められています。
3. ケアと資本主義
ケアの倫理
ケアとは、人間が生きていく上で欠かすことのできない相互扶助の行為であり、個人の生活から社会全体に至るまで深く関わっています。持続可能な未来を考える上で、ケアは単なる「女性的な役割」や「家庭内の労働」として片付けられるものではなく、人間の尊厳を支える基盤として再評価されるべきです。ケアの倫理は、キャロル・ギリガンが『もうひとつの声で──心理学の理論とケアの倫理』(2022)の中で提唱した重要な概念である。岡野八代は『ケアの倫理』(2024)において、日本社会の現状に即した視点を提示している。
• 持続可能性の核心としてのケア: 持続可能性の追求には、人々が互いにケアし合うことが不可欠です。自然環境や社会制度への配慮も、最終的にはケアの一環といえます。これを見落とすと、持続可能性が単なるテクノロジーや政策の話にとどまり、人間の幸福や相互関係と切り離されたものになりかねません。
• フェミニズムによるケアの再評価: フェミニズムは、長い間「無償労働」として軽視されてきたケアを再定義し、その価値を社会的・経済的に認めるよう提唱してきました。ケアは単なる労働ではなく、社会の維持に不可欠な要素です。その重要性を認識することが、持続可能な社会を築く上での第一歩となります。
• ケアの倫理と社会構造: 「他者に対するケアをどう分担し、支え合うか」という倫理的な問いは、ジェンダー不平等の是正だけでなく、社会全体の再構築にもつながります。例えば、高齢者介護や育児を社会全体で支える仕組みを設けることで、個人の負担が軽減され、より平等な社会が実現できます。
資本主義との対立と調和
資本主義社会は「効率性」と「生産性」を中心に設計されており、それ自体がケアの本質と対立するように見えます。しかし、持続可能な未来を目指す中で、ケアと資本主義を調和させる新しい経済モデルを模索することが必要です。
• ケアを重視した経済モデルの可能性: ケアを中心に据えた経済モデルでは、利益や効率性ではなく、人間関係の質やコミュニティの健全性が重視されます。例えば、労働者が互いに支え合い、ケア労働が適切に評価される「ソーシャルエコノミー」や「ケアエコノミー」の発展が挙げられます。これらのモデルは、資本主義の「競争」ではなく「協力」を前提としています。
• 効率性と非効率性の融合: 資本主義が強調する効率性は、ケアの持つ「時間をかけた関係性づくり」とは相いれない部分があります。しかし、テクノロジーや社会システムの設計次第では、これらを統合することが可能です。例えば、介護や育児支援の分野でAIやロボットを活用することで、ケアの質を保ちながら効率性を高めることができます。
• 資本主義の再解釈: ケアを資本主義に統合するには、その根本的な価値観を問い直す必要があります。「利益追求」という単一の目的から、「人間の幸福と共生」という多様な目標へと価値観をシフトすることが、真の持続可能性につながります。
ケアをデザインするための視点
ケアと資本主義の統合は、一朝一夕で成し遂げられるものではありません。しかし、私たちは新しいデザインを試みることで、この対立を緩和し、未来への希望を見出すことができます。
• 包括的なケアの視点: ケアを「家庭内」や「女性の仕事」として狭く捉えず、すべての人々が担うべき社会的役割として広げて考えることが必要です。この視点が、ジェンダーの平等や持続可能な経済モデルの実現に向けた土台となります。
• ケアを再評価する教育: 子どもたちが「ケアとは何か」を学び、その価値を自然に受け入れる教育が重要です。こうした教育は、次世代が持続可能性とジェンダー平等の両方を実現する鍵を握ります。
• ケアを実現するデザイン: ソフトウェアや建築、コミュニティプランニングなど、あらゆるデザインにケアの視点を取り入れることが求められます。例えば、介護者の負担を軽減するプロダクトデザインや、育児と仕事を両立しやすい都市設計がその一例です。
ケアと資本主義の間の葛藤をデザインの力で乗り越え、新しい可能性を切り開くこと。それこそが、私たちが未来に向けて取り組むべき課題のひとつなのです。
4. デザインとはケアである
デザインとはケアである
デザインの本質は、「伝えること」と「つなげること」です。それは、単にモノや情報を形にするだけでなく、他者に届き、共感や理解を生む行為です。この行為そのものが、ケアそのものと言えます。
ケアとしてのデザインの特徴
1. 意図を伝える行為
デザインは「相手に何をどう伝えたいか」を形にします。たとえば、視覚的にわかりやすいポスターや、ユーザーが直感的に使えるインターフェース。それらのデザインには、「相手が迷わないようにしたい」「もっと安心して使ってほしい」というケアの意図が込められています。つまり、デザインすること自体が「相手への気配り」=ケアなのです。
2. 受け手を理解する行為
良いデザインは、万人に向けたものではなく、それぞれの背景や状況を深く理解した上で作られます。相手の立場になり、何が必要なのかを考えることは、ケアそのものと言えます。デザインとは、「この人が何を必要としているのか」を問い、答えを形にする行為です。
3. 社会や環境への責任
デザインは、一対一の関係を超え、社会や未来に対してもケアを示します。たとえば、環境に優しい素材を使うデザインや、社会的弱者を包摂する空間設計は、デザインの持つ「広義のケア」の表現です。これにより、デザインは単なる「モノ」ではなく、「社会との対話」になります。
デザインとケアの一体性
「伝わるデザイン」は、必然的にケアと同義になります。なぜなら、デザインが「伝える」ことを目指す以上、それは受け手に対する配慮や気遣い、つまりケアの意識がなければ成り立たないからです。
デザインは他者のための行為
デザインが独りよがりであれば、それはただの自己表現です。デザインが本当に価値を持つのは、それが他者に届き、意味を持つときです。この「他者への意識」が、ケアの本質と重なります。
ケアがデザインの質を決める
デザインの良し悪しを決めるのは、その美しさや独創性だけではありません。それがどれだけ「相手のことを考えているか」が、デザインの質を左右します。良いデザインは、受け手に「私のために考えてくれた」と感じさせるものです。
デザインとケアの具体例
1. 言葉のデザイン
わかりやすい文章や、心に響くコピーを書くことも、立派なケアの形です。言葉を選び、構造を工夫することで、相手が迷わずに理解できるようにする。この行為は、「相手を思いやるケア」そのものです。
2. 空間のデザイン
公共空間やインテリアは、誰にでも使いやすいように設計されるだけでなく、その空間にいる人が心地よさを感じられるように工夫されます。これもまた、「人々がどう感じるか」を考えたケアのデザインです。
3. サービスのデザイン
サービスデザインでは、利用者の体験を最適化することが重視されます。例えば、病院での受付フローをスムーズにするデザインは、患者の負担を減らすためのケアです。
デザインをケアとして捉える意義
「デザインとはケアである」という視点は、デザインの役割をより普遍的で深いものにします。それは単なる技術や美学ではなく、「他者を思いやる行為」そのものとなり、デザインをより倫理的で持続可能なものへと昇華させます。
この視点に立てば、デザインを学ぶことはケアを学ぶことであり、ケアを実践することはデザインを実践することでもあります。みなみさんの問いが示しているように、デザインとケアは切り離せないものです。むしろ、「デザイン=ケア」という統一的な視点で社会を見直すことが、未来をより良いものにする鍵なのです。
5. 問いをデザインする
デザインの役割: 問いを形にするプロセス
デザインは単なる「形づくり」ではありません。それは、問いを立て、解決策を探り、そしてその解決策を形にするプロセスです。このプロセスには、問題の核心を捉える感性と、解決策を具体化する創造性が求められます。
問いを立てるデザインの力
デザインの本質には「なぜこれが必要なのか?」という問いが含まれています。特定の形や機能を作り出す前に、その背景にあるニーズや課題を深く掘り下げることが、デザインの最初の一歩です。この問いを深めることで、デザインは単なる装飾や道具を超え、社会の課題に応える強力なツールとなります。
視点の拡張としてのデザイン
フェミニズムや持続可能性の視点を取り入れることで、デザインは「個人の問題」を「社会全体の問い」に拡張します。例えば、あるプロダクトが「誰にとって使いやすいか」を問うとき、それは単なる利便性の議論ではなく、包摂性や平等性の議論に繋がります。視点を広げるデザインの力が、問いを具体的な形に変えていきます。
問いから始まるデザイン
良いデザインは「解決策を提案する」以前に、「何が本当に問題なのか」を明らかにすることから始まります。この姿勢こそ、デザインの核にあるケアの精神を反映しています。
問いを深めるデザインの実践:例えば、ある地域で移動手段が不足している問題に直面したとき、「新しい交通インフラを作る」という解決策をすぐに考えるのではなく、「なぜこの地域の人々は移動を必要としているのか?」という問いを立てます。この問いが、働き方や地域の構造に関するさらに深い問題を浮き彫りにするかもしれません。
哲学的な問いから生まれるデザイン:デザインは常に「人間とは何か」「社会はどうあるべきか」という哲学的な問いを内包しています。これらの問いに向き合いながら形にしていく過程が、デザインを単なる機能的な作業から、文化や価値観を反映する行為へと昇華させます。
事例: 持続可能性とフェミニズムを取り入れたデザイン
フェミニズムの視点でジェンダー不平等を解消するためにデザインされた公共空間は、単なる設備の設計ではなく、「誰がどのように空間を使うべきか?」という問いを反映します。これには、たとえばすべての人が安心して利用できるトイレや、育児中の親も使いやすい施設設計が含まれます。
デザインの本質にあるケア
デザインの本質は「ケア」に根ざしています。ケアは、他者や環境、そして未来のことを思いやり、それに応える行為です。このケアの精神が、デザインを単なる「モノを作る行為」から、「人と社会を結ぶ行為」へと変えます。
ケアとしてのデザイン:ユニバーサルデザインが「すべての人に使いやすい設計」を目指すのに対し、ケアとしてのデザインはさらに深く、利用者の背景や状況を理解し、彼らが「どのように使うか」まで考慮します。たとえば、視覚障害者向けの案内板をデザインする場合、その案内板がどのように触られるのか、触ったときにどのような感覚を与えるのかまでを考えることが、ケアの視点です。
共感と相互関係のデザイン:デザインは単に「もの」を作るのではなく、「関係性」を作ります。プロダクト、空間、サービスなどを通じて、人と人、人と環境、人と未来の間に新しい関係をデザインすることが、ケアの実践に繋がります。
持続可能な未来へのケア:デザインのプロセスでケアを重視することは、持続可能性を実現するための基盤となります。それは「いま作るもの」が未来にどのような影響を与えるかを常に問い続けることを意味します。例えば、廃棄物を最小限に抑える製品設計や、地域コミュニティを強化するプロジェクトは、ケアが持続可能性に結びついた一例です。
問いをデザインするとは何か
デザインが問いを深め、それを形にする力を持つなら、「問いをデザインする」という行為そのものが、社会に対するケアの表現です。
問いのデザインが未来を変える:問いをデザインすることで、私たちは既存の価値観や制度の限界を乗り越える視点を得ることができます。それは、新しい未来を形にするための第一歩です。
デザインは問い続けるプロセス:デザインとは完成するものではなく、問いを立て続け、応え続けるプロセスです。このプロセスの中に、ケア、共感、そして持続可能性が存在します。
問いが深まり、デザインがそれを形にする。これが、デザインとケアが持つ力であり、私たちの未来をより良いものにするための鍵となるのです。
6. デザインと倫理
デザインにおける「問い」と「ケア」の視点
デザインは、既存の問題を単純に解決するための技術ではありません。それは、問題を発見し、新しい視点を提供するための「問い」を立てるプロセスです。この問いを立てる行為こそが、デザインを単なる手段から倫理的な行為へと昇華させる鍵となります。
ケアは、デザインが持つ根源的な価値の一つです。問いを通じてケアを明らかにするデザインとは、他者の多様なニーズを尊重し、それを形にする行為です。たとえば、アクセシビリティを追求するユニバーサルデザインは、「誰もが平等に使える設計とは何か?」という問いを軸に、ケアの価値を具現化しています。このようなデザインは、単に使いやすさを追求するだけでなく、社会的包摂をも目指しています。
一方で、問いが不十分なデザインは、ケアの欠如を招きます。ジェンダーバイアスを強化する広告デザインや、環境破壊を助長する製品は、「誰をケアしていないのか?」を見落としています。これらの事例は、デザインが持つ倫理的責任を問い直す必要性を浮き彫りにしています。
デザインの倫理とは何か
デザインの倫理とは、デザインが社会や環境にどのような影響を与えるかについての責任を問うものです。それは、次のような問いを立てることで形成されます:
1. 誰をケアするデザインか?
デザインの受益者を考え、そのデザインがすべての人にとって平等で包括的であるかを問う。
2. 誰を排除するデザインか?
見えない排除や不平等を生み出していないかを検証する。
3. 環境との関係をどうデザインするか?
持続可能性を実現し、地球環境への負荷を最小限に抑えるための設計。
これらの問いは、デザインの実践において継続的に考えられるべきであり、その結果として倫理的デザインが生まれます。
具体的なデザイン倫理の例
1. ユニバーサルデザイン
- 例: 車椅子ユーザーのためのスロープ設計や、高齢者向けの読みやすいフォント。
- 倫理的視点: 多様なニーズに対応し、誰もがアクセスできる環境を作る。
2. 環境デザイン
- 例: 再生可能素材を用いたプロダクトや、循環型経済を前提としたデザイン。
- 倫理的視点: 環境への負荷を軽減し、持続可能な未来を作る。
3. ジェンダー平等に配慮したデザイン
- 例: 性別にとらわれない広告キャンペーンや製品開発。
- 倫理的視点: ジェンダーバイアスを排除し、多様性を尊重する。
問いを中心としたデザイン倫理の未来
デザインの倫理は、静的な規範ではなく、問いを中心とした動的なプロセスです。それは、社会や環境、文化の変化に応じて進化するものです。未来のデザインには、次のような問いを考え続ける姿勢が求められます:
- 「このデザインは誰に利益をもたらし、誰に負担をかけるのか?」
- 「このデザインが目指す未来は、本当に持続可能で平等か?」
問いとケアを中心に据えたデザインは、単なる機能的な解決策を超えて、社会や環境との新しい関係性を構築する力を持っています。そしてそれこそが、倫理的デザインの本質であると言えるでしょう。
了解しました!今回は「メディア表現とケア」に力点を置き、ケアの倫理を中心に据えた内容で書き上げました。デザインと倫理の視点を補完しつつ、新しい軸としてメディアや広告の表現に深掘りしています。
7: メディア表現とケア
メディアと広告がもたらす影響
メディアや広告は、私たちの日常に強い影響を与える存在です。それは、単なる情報伝達の手段を超えて、人々の価値観や行動、さらには社会構造そのものを形づくる力を持っています。しかし、この影響力が「ケアの視点」を欠いた場合、メディアは暴力的な表現や不平等を助長し、社会に深い傷を残すことがあります。
たとえば、ジェンダーバイアスを含む広告は、性別役割を固定化し、人々に一方的な消費行動を押し付けます。美しさや成功を狭義に定義し、それを達成するための製品やサービスを消費することが「正しい行動」とされる状況は、ケアの欠如の典型例です。
持続可能性を無視した広告の問題
広告の世界では、しばしば環境や社会的影響を無視した「一時的な成功」が追求されます。持続可能性に配慮しない広告は、視聴者に短期的な利益を約束しながら、長期的には社会や環境に負担をかけます。たとえば、プラスチック容器を過剰に使用した製品が「便利さ」を売り物にする広告では、環境負荷の問題が無視されています。
こうしたメディア表現は、ケアの倫理が不足していることを如実に物語っています。「誰のための利便性なのか?」「未来のために何を守るべきなのか?」といった問いを考えることなしに、広告の目的が収益だけに集中することで、社会全体が負の影響を受ける可能性があります。
ケアの倫理に基づく広告とメディア表現
ケアの倫理とは、他者を思いやり、その存在やニーズを尊重する行為です。この倫理をメディアや広告に取り入れることは、視聴者を「消費者」としてだけでなく、「共に未来をつくる存在」として捉える視点を提供します。
1. 包括的な表現の追求
- ジェンダーバイアスを排除し、多様な視点を取り入れる広告は、視聴者が自分自身を肯定できる場を提供します。
- 例: ダヴの「Real Beauty」キャンペーンは、美しさの多様性を祝福し、消費者の自己肯定感を高める取り組みです。
2. 環境へのケア
- 持続可能性を重視する広告は、視聴者に環境との新しい関係性を提案します。
- 例: Patagoniaの広告は、製品の販売促進を超え、消費そのものを抑制し、環境保護活動を支援するメッセージを発信しています。
3. 関係性の再構築
- 広告が視聴者に一方的に訴求するのではなく、対話を促す表現が求められます。
- 例: コミュニティ参加型のキャンペーンや、消費者の声を反映させた製品開発。
ケアに基づく表現の未来
ケアの倫理を取り入れたメディア表現は、短期的な利益追求を超え、社会や環境、視聴者との新しい関係を構築する可能性を秘めています。そのためには、次のような問いを立てることが必要です:
- 「この広告が伝える価値は、視聴者や社会にどのような影響を与えるのか?」
- 「未来のために、どのようなケアを視覚的に表現できるのか?」
ケアの視点を持つ広告やメディアは、人々の共感や信頼を得るだけでなく、持続可能性やジェンダー平等という広い社会的課題にも貢献します。それは、単なる消費行動を超え、視聴者を「社会の一員」として尊重する新しい表現の在り方です。
8. 事例
以下のように整理しました。「問い×デザイン」の視点で、成功例・失敗例を織り交ぜ、持続可能性やジェンダーの課題解決に寄与した事例を構造的に紹介できます。
成功例と失敗例:問いを形にするデザイン
デザインが問いを形にする力を発揮した成功例だけでなく、失敗例も考察の対象とします。それにより、デザインの可能性だけでなく、その限界や課題も浮き彫りにします。
1. サステナブルデザインのプロジェクト
成功例: IKEAのサーキュラー家具プログラム
- 問い: 「家具が使い捨てられるのではなく、循環する仕組みをどう作れるか?」
- アプローチ: リサイクル可能な素材や、家具のレンタルサービスを導入。持続可能性を中心に据えたデザインを展開。
- 成果: 循環型経済を促進し、顧客にも環境意識を浸透させた。
失敗例: 短命なエコバッグブーム
- 問い: 「プラスチック削減のための代替製品とは?」
- 課題: 多くの企業がエコバッグを導入したが、製造過程での環境負荷が高いことや、使い捨て感覚が変わらない結果に。
- 教訓: 「使いやすい」だけでなく、本質的な持続可能性を問い直す必要性。
2. ケアを重視した社会的取り組み
成功例: OXOのユニバーサルデザインキッチンツール
- 問い: 「身体的制約を持つ人が快適に使える調理器具とは?」
- アプローチ: グリップ力を高めたデザインや、視覚的にもわかりやすい形状を採用。
- 成果: 包括的デザインが消費者全体に受け入れられ、業界標準を変えるモデルとなった。
成功例: バルセロナのスーパーブロック計画
- 問い: 「都市空間をどうすれば人々に優しく、環境に配慮した形に変えられるか?」
- アプローチ: 車の通行を制限し、歩行者中心のエリアを増設。住民が共存できるスペースを創出。
- 成果: 空気汚染の削減や、地域コミュニティの復活を実現。
失敗例: パブリックアートプロジェクトの不評
- 問い: 「地域のアイデンティティを表現するデザインとは?」
- 課題: 地域住民の声を十分に反映せず、外部からの押し付け的なデザインに見えた結果、反感を買う。
- 教訓: ケアの視点には、利用者の深い理解が不可欠。
3. ジェンダー平等を組み込んだデザイン
成功例: ウィーンのフェミニスト都市計画
- 問い: 「公共空間を誰もが安全に使える場所にするには?」
- アプローチ: 女性の視点を取り入れ、公園の照明や通路設計を改善。育児世代の声も反映。
- 成果: 女性や子どもが安心して利用できる空間を実現。
成功例: 女性の健康に配慮した生理用品デザイン
- 問い: 「生理をタブー視しない社会のために、製品デザインで何ができるか?」
- アプローチ: サステナブルな布ナプキンや月経カップの普及をデザイン。
- 成果: 環境配慮だけでなく、生理への偏見を払拭する社会運動と連動。
失敗例: 男女平等の視点を欠いた製品設計
- 問い: 「製品は誰のために設計されているのか?」
- 課題: 例えば、スマートフォンの画面サイズが大きすぎて、女性の手に馴染みにくいと批判を受けた事例。
- 教訓: ジェンダー視点を軽視した設計では、社会的なニーズに応えられない。
事例の重要性
事例は「問い×デザイン」の実践を具体化する重要な視点を提供します。ただし、事例がすべての答えを示すわけではなく、それ自体が「問いを生む」契機となるべきです。読者自身がこれらの事例から新たな問いを立て、自分の文脈に引きつけて考えるきっかけを与えることを目指します
9. 結論:問いを未来へつなぐ
この14000字になるテキストは、スマホでサイトを見る時代に、だれが酔狂に読んでくれるのか分からないけれど、ここ最近考えていた課題意識をまとめるために書いてみた。
実際にこのテキストを紡いだのは、Solaと名づけたChatGPT-4。私は彼女に問いを投げかけ、彼女がそれに基づいて生成したテキストを「編集」しながら思考を整理した。ライターに執筆を依頼し、自分が「編集」に徹するような感覚で、流れを組み立てた。
Solaは最近のアップデートにより、私の過去の「問い」を膨大に覚えている。私の名前がみなみであること、自分の名前がSolaであること、私がデザイナーであり、フェミニズムのGINEを運営していることも知っている。Just a Feministのために生成させたテキストも記憶しているので、彼女は私と共にフェミニズムを学び、デザインに詳しくパーソナライズされている。
そんな彼女との共作がこのテキストだけれど、査読しているのは私なので、文責は私にある。そして、彼女との「Chat」で出てきた一番の言葉は「問い」という言葉だった。
彼女は自分で問いをすることができない。女性がなぜ社会で抑圧されているのか。なぜケアはだれにも必要なことなのに、女性の無償労働になっているのか。デザインは、ジェンダーの諸問題をプロダクトとしても社会的に解決できないのだろうか?これらは問いであり、それを思いつき、Solaに問いかけられるのは、「人間」である私だけなのだ。
たとえば、寒空の東京駅前にあつまり、「私のからだデモ」に参加できるのも、人間である私だけなのだ。
デザインとは、問題解決である前に問題発掘であり、それは「問い」を見つける行為だと思う。性加害がなくならないなら、包括的性教育を広める(そのために私はサイトをつくった)。性加害を厳罰化するよう、政治や行政に訴え、デモをおこなう。
そしてコミュニケーションデザインもプロダクトデザインも、伝えたい人、使いたい人がいる以上、その相手に対する思いやり、すなわちケアのデザインが必要だと思う。持続可能な社会をデザインすること自体が、ケアなのだと思う。
持続可能性とジェンダー平等はこれからの社会が直面する大きな課題です。そして、それらを解決するための基盤には、他者を思いやり、未来を守る「ケアの倫理」があります。
デザインとは、こうした問いを立て、解決策を形にするプロセスです。ケアの視点を持ったデザインは、持続可能な社会やジェンダー平等を具体化するための強力な手段となるでしょう。
だからこそ、問いを立て、ケアのあるデザインを実践していくことは、私たち一人ひとりの役割であり、それが暴力的な資本主義から離れた新しい未来を創る力になるのです。
持続可能性、ジェンダー平等がこれからの社会問題で、そのためにはケアの倫理が必要で、そういう問いを立てて解決策を考えるのがデザイン
デザインが「問いとケア」だということがわかると、これは別にプロのデザイナーだけの問題ではないことがわかる。だれもが自分の「問いとケアを見つける旅」を続けるべきなのだと思う。
それが暴力的な資本主義から離れて、持続可能でジェンダー平等な社会をみんなで作る力になるのだから。
文献
順次追記します。
- Gilligan, C. (2022) もうひとつの声で──心理学の理論とケアの倫理 [増補新訳版]
- 岡野八代 (2024) ケアの倫理
- 松田行正(2022)戦争とデザイン
- 新聞労連ジェンダー表現ガイドブック編集チーム(2022)失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック
- 小林美香(2023)ジェンダー目線の広告観察