Glossary
K-POPのファンダムがクィアコミュニティを魅了する理由には、いくつかの文化的、社会的、そして感情的な要因があります。以下にその主な理由を挙げます。
1. ジェンダーの流動性とパフォーマンス
- K-POPアイドルは伝統的なジェンダー規範を越えるようなビジュアルと振る舞いを持つことが多いです。特に男性アイドルはメイクやファッション、仕草の面でフェミニンな美しさを表現し、女性アイドルもパワフルで中性的な魅力を発揮します。
- こうしたジェンダー表現は、クィアの人々にとって「自分らしさ」や「多様な自己表現」を投影できる場として機能します。
2. 包摂的なメッセージ
- 一部のK-POPアーティストは「愛と自己受容」のテーマを掲げて活動しています。たとえばBTSの「Love Yourself」キャンペーンは、クィアのファンが共感しやすいメッセージとして広まりました。
- また、いくつかのアイドルがLGBTQ+を支持する発言をしたり、プライド月間に関連した活動を行ったりすることで、クィアコミュニティからの支持を得ています。
3. ファンダム文化の共同体的側面
- K-POPのファンダムは、オンラインとオフラインで非常に団結力のあるコミュニティを形成します。これにより、クィアの人々が孤立から逃れ、自分のアイデンティティを肯定できる「居場所」を見つけることができます。
- 特にSNSやフォーラムを通じて、グローバルなネットワークを築ける点が、クィアの若者にとって強い魅力です。
4. 華やかなパフォーマンスとビジュアルの多様性
- K-POPは音楽だけでなく、衣装、振り付け、ミュージックビデオの美学など、視覚的な楽しさを提供します。このエンターテインメント性の高さは、表現豊かなクィアカルチャーと親和性があります。
5. 規範的な社会への挑戦
- 韓国社会は保守的な面もありますが、K-POPはその中で規範に挑む要素を持ち続けています。ファンがK-POPを通じて、自己表現や多様性の肯定を探求することは、社会的な枠組みに対する挑戦ともなります。
- 一部のクィアの人々にとって、K-POPの象徴性は「異端」や「新しい価値観」の体現であり、反骨的な魅力を感じさせるものです。
6. アイドルとファンの「親密さ」
- K-POPアイドルは、SNSやファンイベント、バラエティ番組などを通じてファンとの親密な関係を築こうとします。このような近さは、アイドルを「憧れ」以上の存在に感じさせ、クィアの人々が特に求める「共感」や「受容」の感覚を与えます。
7. フィクショナルな世界観と「逃避」
- 現実社会では直面しがちな差別や偏見から離れ、K-POPのファンダムが提供する世界はクィアの人々にとって心地よい「逃避」の場になります。アイドルが演じるキャラクター性や音楽の物語性もその要因となります。
こうした要素が複合的に作用し、K-POPファンダムはクィアコミュニティを強く惹きつけるものとなっています。この魅力は、個々のアーティストやファンダムの在り方に依存しながらも、ジェンダー規範や社会的境界を越える普遍的な魅力として、多くの人々に響いています。
セクシャリティと推しの交差性について
このテーマはジェンダー、セクシュアリティ、そしてアイドル文化の交差点に位置する複雑な問題ですが、それぞれの事例についてバッシングと擁護の背景を整理しながら説明します。
1. 女性が女性アイドルを推す場合
バッシングの背景
- 「本来のターゲット層」からの排除意識
一部の男性ファンから「女性アイドルは男性向けのもの」という固定観念があるため、女性ファンを排除しようとする態度が見られることがあります。これは、女性アイドルが「男性の欲望を満たす存在」として見られがちな性別役割に根ざしています。 - フェミニズムへの反発
女性ファンがアイドルを推すことで「女性同士の連帯」や「自己肯定感の高まり」を公言する場合、フェミニズムへの反発を感じる人々から攻撃されることがあります。これには社会的なジェンダー対立が関係しています。
擁護の理由
- 自己肯定とロールモデルの存在
女性が女性アイドルを推すことで、女性の成功や魅力を称賛し、自分自身を肯定する姿勢を育むことができます。特に多様な美しさや生き方を見せる女性アイドルは、ファンにとって励ましとなります。 - エンターテインメントの多様性
アイドル文化はジェンダーを越えた普遍的な楽しみ方を提供すべきだという価値観が支持されています。推しは個人の自由であり、ジェンダーによる制限は不当という意見が擁護の根拠となります。
2. ゲイが女性アイドルを推す場合
バッシングの背景
- セクシュアリティの誤解
一部では「ゲイなのに女性アイドルを好きなのは矛盾している」という誤った偏見が存在します。ゲイ男性が女性に性的な関心を持たないというステレオタイプが、この誤解の原因です。 - 女性ファンとの対立
女性アイドルのファン層の中で、ゲイ男性が女性ファンを押しのけて目立とうとするように見られる場合、対立が生じることがあります。特にファン同士の競争が激しい場合に、こうした攻撃が起こりがちです。
擁護の理由
- エンターテインメントへの純粋な愛
ゲイ男性が女性アイドルの音楽、パフォーマンス、ファッションを愛するのは自然なことであり、性的指向とは無関係に楽しむ権利があります。 - 共感と連帯感
多くのゲイ男性は、女性アイドルの強さや美しさに共感し、ジェンダーやセクシュアリティの垣根を越えた「自己表現」や「挑戦」を支持しています。これはクィアと女性アイドルの文化的な親和性とも言えます。
3. レズビアンが男性アイドルを推す場合
バッシングの背景
- セクシュアリティの固定観念
レズビアンが男性アイドルを好きになることに対し、「矛盾している」「本物のレズビアンではない」という偏見が向けられることがあります。セクシュアリティを単純化し、「異性愛的要素があればレズビアンではない」とする誤解に基づいています。 - ファンの純粋性への疑念
一部では、レズビアンが男性アイドルを推すことが「ビジュアルだけを楽しんでいる」または「ファンダムをかき乱している」と誤解される場合もあります。
擁護の理由
- アイドルの魅力はセクシュアリティを超える
レズビアンであっても、男性アイドルの音楽、パフォーマンス、または人間性に魅了されるのは自然なことです。性的指向とは無関係に、アーティストとしての魅力を楽しむ自由があります。 - 個人の感情の多様性
セクシュアリティは単一ではなく、多様で流動的な側面を持ちます。レズビアンが男性アイドルを推すことは、セクシュアリティの多層的な性質を示しており、それを否定することは誤った固定観念を助長します。
結論:自由なファンダム文化の重要性
バッシングの背景には、ジェンダーやセクシュアリティに対する固定観念や、ファンダム内での排他性が大きく影響しています。しかし、アイドルを推すという行為は、音楽やパフォーマンスを通じた個人の感情的な体験であり、ジェンダーやセクシュアリティにとらわれるべきではありません。
擁護の論点としては、「個人の自由」「多様性の尊重」「エンターテインメントの普遍的価値」が挙げられます。この視点を広げることで、より多くの人がアイドル文化を純粋に楽しみ、互いを認め合うファンダムを育むことが可能になるでしょう。
K-POPファンダムのトランス排除について
K-POPやアイドルファンダムなど、一般に「包摂的」とされる文化的空間においても、一部にはトランス排除的な動きが存在することが知られています。この問題の背景と具体例、そしてその影響について説明します。
1. トランス排除的な動きの背景
ジェンダー二元論の影響
- ファンダム内で、性別を「男性」「女性」に二分する考え方が根強く残っていることがあります。このような二元論的な見方は、トランスジェンダーやノンバイナリーの存在を「例外」や「異質」として扱いがちです。
- 特にファンダム内で、性別に基づいた役割分担(たとえば、「女性ファンが男性アイドルを推す」「男性ファンが女性アイドルを推す」といった暗黙の了解)がある場合、トランスの人々がその枠組みに当てはまらないために排除されることがあります。
トランスフォビアの社会的背景
- 一部のファンダムメンバーは、広い社会でのトランスフォビア(トランス差別)をそのまま持ち込みます。これは、特に保守的な文化背景やトランスジェンダーに対する無理解が影響している場合が多いです。
- また、クィアコミュニティ内でも、トランス女性やトランス男性を「本物の女性/男性ではない」と見なす排除的な思想が見られる場合があります。
ファンダム内の競争と排他性
- ファンダムの中では、限られたリソース(チケット、オンラインイベントのアクセス権、グッズなど)を巡る競争が激しく、そこに新しい「他者」が加わることへの抵抗が生じることがあります。
- トランスジェンダーの人々は、ファンダム内で目立つ存在になることがあり、それが他のファンの嫉妬や攻撃を誘発することもあります。
2. トランス排除的な動きの具体例
1. トランスジェンダーのアイデンティティの否定
- トランス女性が「本物の女性ファンではない」と言われたり、トランス男性が「本物の男性ファンではない」と見なされることがあります。このような攻撃は、トランスのファンに心理的な負担を与え、彼らをファンダムから遠ざける原因となります。
2. SNSでの差別的なコメント
- SNS上では、トランスフォビックな発言が一部のファンから投稿されることがあります。これには、トランスファンを「不自然」「過剰な目立ちたがり」として攻撃するコメントや、トランスジェンダーそのものを嘲笑するミームの拡散が含まれます。
3. ファンダム内での排除行為
- オフラインのファンイベントやオンラインのコミュニティで、トランスジェンダーのファンが意図的に無視されたり、排除されたりすることがあります。これは、「ファンダムは自分たち(シスジェンダーの人々)の空間である」という誤った独占意識に起因しています。
3. トランス排除的な動きの影響
個人への心理的ダメージ
- トランス排除的な行為は、トランスジェンダーのファンにとって心理的なストレスとなり、自己肯定感を損なう原因になります。また、「居場所」と感じていたファンダムが排他的であると知ることで、孤立感を深めるケースもあります。
ファンダムの分裂
- トランス排除的な動きは、ファンダム内の分断を引き起こします。包摂的であろうとするファンと排他的な態度を取るファンの間で対立が生じることがあり、ファンダム全体の結束力が弱まる可能性があります。
K-POP業界やアーティストのイメージへの影響
- トランス排除的なファンダムの存在は、K-POPアーティストや業界全体に対する批判につながることがあります。アーティスト自身が包摂的なメッセージを発信している場合、こうした動きはその理念と矛盾するため、ブランドイメージにも悪影響を及ぼす可能性があります。
4. トランス排除に対する擁護と対抗の動き
擁護の理由
- 包摂的なコミュニティの構築
ファンダムは多様な背景を持つ人々が集まる空間であり、ジェンダーやセクシュアリティにかかわらず、すべての人が楽しむ権利を持っています。 - アーティストの理念の支持
多くのK-POPアーティストが「愛と多様性」を掲げている中、ファンが排他的な態度を取ることはアーティストの意図に反する行為です。 - クィアコミュニティ内の連帯
トランス排除に対する批判は、クィアコミュニティの中での連帯感を高めるきっかけにもなっています。「クィアの中でクィアを排除すること」は、コミュニティ全体の弱体化を招くという認識が広がっています。
対抗の取り組み
- オンラインキャンペーン
「No Transphobia in Fandoms」といったハッシュタグキャンペーンが展開され、トランスフォビアへの反対を明確にする動きが広がっています。 - トランスインクルーシブなコミュニティの構築
トランスのファンが安心して参加できる専用のサブコミュニティやイベントが増えつつあります。 - 教育と対話の促進
トランスジェンダーに関する誤解を解消するための情報発信や、ファンダム内での対話が進められています。これにより、排除的な態度を取るファンが学び直す機会を得られます。
結論
トランス排除的な動きは、ジェンダー二元論やトランスフォビアに基づく深刻な問題ですが、ファンダムの中にはそれに対抗し、包摂的な空間を作ろうとする取り組みも多く見られます。K-POPやアイドル文化が本来持つ多様性の価値を守るためには、ファンダム内での対話や連帯を通じて、すべての人が歓迎される環境を築く努力が求められます。
ZINE
ファンダム(Fandom)とは、特定のアイドルやアーティスト、作品、ブランド、サービス、商品などを熱心に支持するファンたちの集団を指します。ファン同士がつながり、独自の文化や価値観を形成するコミュニティのこと。いわゆる推し活コミュニティのことです。ファンダムは、SNSや各種プラットフォームによって形成され、大きなムーブメントを起こすこともあります。
二次創作(ファンフィクション・ファンフィク)における、アルベル(Real Person Slash・RPS)は、日本ではアニメのBLのような形であらわれるけど、韓国ではK-POPという実存のアイドルをつかっておこなわれるらしい
K-POPはなぜマイノリティを引きつけるのかークィアとアイドルの交差するところ(ヨン・ヘウォン編著 2024)をすこしよんで、この世界をしった。
クィア的なものと、アイドル的なものが交差するのは、2丁目のゲイクラブで歌謡曲ナイトをやってたのをみてたから、気になっていた。そこで80年代アイドルの振り付けでおどる若い紅顔のゲイの子だちはどこまでもトランス的なのかも知れないと思った。