性を、身体の仕組みや避妊の知識に限らず、人間関係、人権、ジェンダー、暴力からの安全、意思決定といった広がりのなかで学ぶ教育。ユネスコなどがまとめた『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』が国際的な指針となっている。
このガイダンスの特徴は、5歳から段階的に始めることを想定している点にある。就学前の子どもに教えるのは性行為ではなく、自分のからだは自分のものであること、いやなことにいやと言ってよいこと、困ったら信頼できるおとなに話してよいこと。年齢が上がるにつれ、関係のなかの対等さ、同意、多様なセクシュアリティへと広がっていく。
「早くから教えると性行動を早める」という懸念は、繰り返し検証されてきた。結果は逆で、初交年齢はむしろ遅くなり、避妊具の使用率は上がるという知見が蓄積している。知識は行動を煽るのではなく、選択の幅を与える。
日本では、学習指導要領のいわゆる「はどめ規定」により、妊娠の経過を扱わないなどの制約が続いている。2000年代には、性教育に取り組む学校への政治的な攻撃も起きた。子どもを守るという言葉が、子どもから知識を遠ざける方向に使われることがある——この逆転をどう見るかが、この分野の焦点であり続けている。
→性的同意 →リプロダクティブ・ヘルス/ライツ →性自認
参考文献
ジェンダー事典編集委員会編『ジェンダー事典』丸善出版、2024年
ユネスコ編『改訂版 国際セクシュアリティ教育ガイダンス——科学的根拠に基づいたアプローチ』浅井春夫・艮香織・田代美江子・渡辺大輔訳、明石書店、2020年
浅井春夫『包括的性教育——人権、性の多様性、ジェンダー平等を学ぶ』大月書店、2020年