伝統的な妻(traditional wife)の略。家事と育児に専念する生き方を選び、その暮らしをSNSで発信する女性たち、およびその現象を指す。2010年代後半から英語圏で広がり、TikTokやInstagramを中心に大きな流れになった。

映像の様式には共通点がある。小麦粉から焼き上げるパン、手作りの服、田園風景、丁寧に整えられた台所。1950年代のアメリカのホームドラマを思わせる画づくりが選ばれている。

当人たちの主張は、選択の自由である。働くことを選ぶ権利が認められるなら、家庭に入ることを選ぶ権利も認められるべきだ、と。フルタイムで働きながら家事も担うという二重負担への疲弊が、その背景にあることも指摘されている。

一方で、この現象には別の側面がある。初期から白人至上主義的な言説との近さが報じられており、「伝統的な家族」への回帰が、人種や宗教をめぐる主張と結びつく例が繰り返し確認されてきた。当事者のなかにも、そうした集団と一緒にされることを嫌う声がある。

そして、もうひとつ見落とせない点がある。発信している女性たちの多くは、実際には撮影し、編集し、広告収入を得ている。伝統的な主婦像を演じることが、そのまま職業になっている。無償の家事労働を賛美する映像が、賃労働として制作されている——この二重性こそが、この現象のいちばん奇妙なところかもしれない。

→性別役割分業 →アンペイドワーク →感情労働

参考文献

  • Annie Kelly, “The Housewives of White Supremacy,” The New York Times, June 1, 2018
  • 落合恵美子『21世紀家族へ——家族の戦後体制の見かた・超えかた』第4版、有斐閣、2019年
  • ジェンダー事典編集委員会編『ジェンダー事典』丸善出版、2024年

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