男性が女性に対して、相手のほうが詳しい場合でさえ、相手を無知と決めてかかって説明する振る舞い。man と explain をつなげた造語である。
出所はしばしば誤解されている。レベッカ・ソルニットが2008年4月に発表したエッセイ「男は私にものを説明したがる」が発端とされるが、彼女自身はこの語を使っていない。ソルニットが書いたのは、あるパーティーで年長の男性から「その分野の重要な本」について延々と解説された、しかしその本は彼女自身が書いたものだった、という経験である。語そのものは同じ年の8月、LiveJournal上のやりとりで初めて記録された。2018年には英語圏の主要辞書に相次いで採録されている。
この概念の要点は、無礼な個人の問題ではないところにある。ソルニットが書いたのは、「あなたは知らないはずだ」という前提が繰り返されることで、女性が発言をためらうようになり、発言しても聞かれなくなるという累積の効果だった。専門性や資格があっても、それが目に入らない。知の場から静かに締め出されていく過程である。
ソルニット自身は、この語の流行に留保を示してきた。男性が本質的に欠陥を持つかのように響きかねないからだ。ただ、名前がついたことで初めて言語化できた、と若い研究者に言われて考えを改めたとも語っている。名指す言葉がないうちは、経験は「気のせい」として処理されてしまう。
自分の説明が求められたものかどうかは、話し始める前には分からない。分からないまま話し続けられる立場のことを、特権と呼ぶのだろう。
→マンスプレッディング(manspreading) →特権 →アンコンシャスバイアス(無意識の偏見) →ミソジニー(misogyny) →家父長制(patriarchy)
参考文献
- レベッカ・ソルニット『説教したがる男たち』(ハーン小路恭子訳、左右社、2018年)
- Oxford English Dictionary, “mansplain, v.” / “mansplaining, n.”
- Merriam-Webster, “History of Mansplaining”(オンライン)