産業化とともに成立した、特定の歴史的形態としての家族。夫が賃金を得て、妻が家事と育児を担い、その中心に子どもが置かれる——私たちが「ふつうの家族」と思っているものは、人類に普遍的な形ではなく、近代に生まれた制度である、という視点を含む言葉である。

社会学者の落合恵美子は、その特徴として、家庭と職場の分離、成員どうしの強い情緒的結びつき、子ども中心主義、男は外・女は内という性別分業、非親族の排除などを挙げた。裏返せば、それ以前の家は、生産の場でもあり、奉公人を含む開かれた集団でもあったということだ。

日本でこの形が広く行き渡ったのは、戦後の高度経済成長期である。専業主婦という存在が大衆化したのは、たかだか数十年のことにすぎない。「昔ながらの家族」と語られるものの多くは、実はこの時期の家族像を指している。

近代家族は、外部から遮断された親密な空間をつくった。それは安らぎの場であると同時に、暴力やケアの負担が外から見えなくなる場でもある。この二面性をどう扱うかが、家族をめぐる議論の核心にある。

→明治民法と家制度 →家事労働 →親密圏 →イエ

参考文献

  • 落合恵美子『21世紀家族へ——家族の戦後体制の見かた・超えかた』有斐閣、1994年(第4版2019年)
  • 上野千鶴子『近代家族の成立と終焉』岩波書店、1994年

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