1990年代以降のメディア文化に広がった感性を指す。フェミニズムはすでに役目を終えたという前提のうえで、その語彙——選択、自立、エンパワーメント——だけが受け継がれ、消費と自己管理の言葉として使われていく状態である。

批判的な分析概念として整理したのは、メディア研究者のロザリンド・ギルとアンジェラ・マクロビーである。マクロビーは、フェミニズムが単に否定されるのではなく、「もう達成された」という形でいったん受け入れられたうえで無効化されると論じた。女性の活躍を称える広告が、同時に痩せた身体と絶え間ない自己点検を要求する。自由に選んでいるはずが、選ぶべき正解はあらかじめ決まっている。この二重性がポストフェミニズムの核心である。

日本では菊地夏野が「女子力」という語にこの構造を読み取っている。能力の向上として語られるものが、実際には身だしなみや気配りといった無償の労働を女性個人の責任に振り分けていく回路である。

用語として注意が要るのは、第三波フェミニズムとの区別である。第三波は運動が自らを名乗った呼称であり、ポストフェミニズムは主として外側からの分析概念だ。個人の選択を重んじる点で両者は重なるが、同じものとして扱うと、批判している側と批判されている側が混ざってしまう。

「ポスト」は「その後」ではなく「取り込み」と読むほうが正確だろう。終わったことにされた運動は、名前を奪われたまま、その語彙だけを働かされ続ける。

→第三波フェミニズム(third-wave feminism) →第四波フェミニズム(fourth-wave feminism) →エンパワーメント →ルッキズム(lookism) →ナンシー・フレイザー

参考文献

  • アンジェラ・マクロビー『フェミニズムとレジリエンスの政治——ジェンダー、メディア、そして福祉の終焉』(田中東子・河野真太郎訳、青土社、2022年)
  • 菊地夏野『日本のポストフェミニズム——「女子力」とネオリベラリズム』(大月書店、2019年)
  • 田中東子『メディア文化とジェンダーの政治学』(世界思想社、2012年)

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