Glossary
トラッドワイフ(Tradwife) とは、「Traditional Wife(伝統的な妻)」を意味し、特に性別役割に基づく家庭生活を理想として掲げる女性たちを指します。
トラッドワイフの特徴
- 夫が働き、妻が家庭を守るという伝統的な性別役割分担を重視
- 専業主婦として家庭の管理や育児に専念
- 家事、料理、掃除、子育てなどを「女性の役割」として積極的に担う
- 夫を「一家の大黒柱」として敬い、従う姿勢を見せる
- 一部では1950年代風のファッションやライフスタイルを取り入れる人もいる
背景
トラッドワイフの概念は、SNS(InstagramやTikTok)を通じて広がり、特に欧米の保守的な価値観に共感する女性たちの間で「現代のフェミニズムへの反動」として注目されています。
議論のポイント
肯定的な見方
- 家庭を「キャリア」として大切にする選択肢の一つとして支持される
- 社会が女性に過度な「キャリア志向」を押し付けることへの反発
- 家族を第一優先にする生き方を「選択する自由」を尊重すべきという意見
批判的な見方
- トラッドワイフは、ジェンダーの固定観念を強化する恐れがある
- 女性の従属を美化し、男女平等の進展を妨げるという批判
- 経済的に依存する生き方がリスクを伴う
トラッドワイフとフェミニズムの関係
- フェミニズムは女性の権利拡大を主張しますが、トラッドワイフ運動はその一部を否定していると捉えられることがあります。
- 一方で、「フェミニズムは女性が自分の生き方を選択する権利を尊重するもの」と考え、トラッドワイフの選択も「自由意志」として認めるべきだとする意見もあります。
日本におけるトラッドワイフの影響
日本では「トラッドワイフ」という言葉自体はまだ一般的ではありませんが、「良妻賢母」という伝統的な価値観が類似した文化的背景として存在します。
特に、昭和時代の家族モデルに近い考え方で、「夫を立てる」「専業主婦の理想像」などがその例です。
女性の社会進出とトラッドワイフの関係
1. 女性の社会進出に伴う課題
ダブルバインド(板挟み)
- 「キャリアも家庭も完璧に」という社会からのプレッシャーが女性に過度な負担を与えている。
働き続ける難しさと支援不足
- 出産・育児によるキャリアの中断が依然として大きな課題。
- 働き方の柔軟性の欠如により、女性がパートタイムや非正規雇用に追いやられる。
社会的な偏見
- 「女性はサポート役に徹するべき」という固定観念が依然として残り、女性のリーダー職登用を妨げている。
2. トラッドワイフは反動としての現象か?
女性の社会進出に伴い、「働くことが辛すぎる」と感じた一部の女性が、伝統的な価値観に回帰する現象が見られます。
欧米での動き
- 過度な競争による疲弊
- フェミニズム運動の「行き過ぎ」による反発
日本での兆し
- 専業主婦志向の復活
- 長時間労働や育児負担などが背景にあり、家庭に戻るほうが楽だと感じる女性もいる。
リベラル化の揺り戻しは起こるのか?
保守化が進んでも、いずれリベラル化の揺り戻しが起こる可能性が高いです。しかし、これには世代交代、テクノロジーの進化、グローバル化といった要因が関わります。
1. 世代交代
- 若い世代ほどリベラルな価値観を持つ傾向があり、世代交代が進むことで社会はリベラル化しやすくなります。
2. テクノロジーの進化
- AI、ロボティクス、バイオテクノロジーの発展が、新しい倫理観や価値観を求めるようになります。
3. グローバル化と文化の多様化
- 異なる文化や価値観と接する機会が増えることで、多様性が広がり、単一の価値観に縛られることが難しくなります。
最後に:揺り戻しを生む「体のデモ」「言葉を紡ぐデモ」
リベラル化への揺り戻しは、社会の成熟度や日々の個々のアクションによって進むものです。
- 「体のデモ」:自分の体を使って、存在を示し続けること
- 「言葉を紡ぐデモ」:新しい物語や問いを立てて、対話を促すこと
日々の小さなアクションが次の時代を紡ぐ力になります。
ZINE
トランプ政権の誕生は、明らかに保守バックラッシュの揺り戻しだった。若者のトラッドワイフ指向(主婦指向)も同様なものだろう。結局、女性の社会進出が、男性と同じ様な、長時間労働を求めものであれば意味がないのだ。女性の社会進出は同時に、働き方改革をともなうものでなければならないし、ケア労働を応分に男女が負担する社会でないと、このような保守化、揺り戻しを産むのだとおもう。
振り子は一方に触れたままではなく、いずれリベラルへの揺り戻しもあるだろう。しかしその時に、古いリベラルに懐古的に揺り戻すのでは意味がない。日々、アクションをしながら、スパイラル状に進化したリベラルを模索しないと、揺り戻す価値はないと思う。