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ジェンダー研究とは何か?
ジェンダー研究は、社会における性別の役割や不平等を分析し、ジェンダーがどのように構築され、どのように人々の生活に影響を与えるのかを探究する学問分野です。単に「女性学」や「男性学」にとどまらず、あらゆる性別やアイデンティティを対象にしています。
この研究は、「性別は自然に決まるものではなく、社会的に作られたものだ」という認識に基づいています。つまり、男はこう、女はこうという固定観念は、生物学的な事実ではなく、文化的・歴史的な産物であることを示すのがジェンダー研究の目的のひとつです。
ジェンダー研究の歴史的背景
1. 「男女二元論」という誤解の起源
長い間、人々は性別を「男」と「女」の二つに分ける二元論的な考え方に支配されてきました。
この考え方の根底には、生物学的決定論がありました。
- 男性は強くて理性的、だから公共の場(労働、政治)を担うべきだ
- 女性は感情的で家庭向き、だから家事や育児を担うべきだ
こうした固定観念が、性別役割分担を正当化し、女性を社会的に抑圧する仕組みを作ってきました。
しかし、1970年代のフェミニズム運動の中で、「性別は生物学的に決まるものではなく、社会的に作られた役割だ」という考えが生まれました。これが、「ジェンダー」という概念の誕生です。
2. ジェンダー研究が注目されるようになった背景
現代社会でジェンダー研究が注目されるようになった理由は、「男女二元論」では説明できない現実が明らかになってきたからです。
たとえば――
- トランスジェンダーやノンバイナリーの存在
- 女性の社会進出と、それに伴う不平等
- 家父長制の終焉と多様な家族形態の登場
こうした変化は、「男か女か」という単純な区分では説明できない社会の複雑さを浮き彫りにしました。
ジェンダー研究が対象とする領域
ジェンダー研究は、以下のような社会のさまざまな領域を対象にします。
1. 労働
- 「女性の仕事は低賃金でもいい」という固定観念が、労働市場の不平等を生んできました。
- 家事労働の無償化も、ジェンダー研究の重要なテーマです。
問いかけ:「なぜ、女性の仕事は評価されにくいのか?」
問いかけ:「家事や育児は、なぜ女性の仕事とされてきたのか?」
2. 家族
- 伝統的な家族像(父=稼ぎ手、母=家庭)は、現代では多様化しています。
- ジェンダー研究は、家族のあり方がどう変わってきたのかを探ります。
問いかけ:「家族の形が変わることで、何が変わるのか?」
問いかけ:「同性カップルやトランスジェンダーの家族は、なぜ排除されがちなのか?」
3. 福祉
- ジェンダー研究は、福祉政策におけるジェンダー不平等にも注目します。
- たとえば、育児休暇や介護の負担は、主に女性が担うと想定されています。
問いかけ:「福祉政策は、なぜ女性に負担を押し付けがちなのか?」
問いかけ:「育児や介護を、どうすれば社会全体で支えられるのか?」
「ジェンダー」はただの理論ではない
ジェンダー研究が扱うテーマは、ただの理論や学問の話ではなく、私たちの日常生活のあらゆる場面に関わっています。
- なぜ、女性は仕事と家事を両立しなければならないのか?
- なぜ、トランスジェンダーは差別されるのか?
- なぜ、「男らしさ」「女らしさ」が求められるのか?
こうした問いを立て、日常の違和感に気づき、社会を変える力が、ジェンダー研究にはあります。
結論:ジェンダー研究の意義
ジェンダー研究は、単に男女の違いを研究するものではありません。
社会の中で作られた「性別役割」の仕組みを解明し、不平等を解消するための学問です。
この研究は、「男か女か」という単純な区分を超えて、多様な生き方を認め合う社会を目指しています。
ジェンダー研究は、こう問いかけます。
「性別は、あなたが生まれ持ったものではなく、社会が押し付けたものかもしれない。」
この問いをきっかけに、私たちは「当たり前」とされていることを再考し、より平等な社会を作る手助けができるのです。
ZINE
この項目は、三省堂の「ジェンダー事典」にある代表的な項目です。フェミニズムとジェンダー学は隣り合わせになっていて、ジェンダーについてその意味を問うことは、とても重要だとおもいます。
そもそも性別とはなんなのか、その性別によってなぜ私たちは収入格差があったり、するのか?
そもそも論を問うのがジェンダー研究の根っこだとおもうのです。