Glossary
1. DVの定義とその特徴
DV(Domestic Violence) とは、配偶者や恋人など、親密な関係にある(またはあった)相手から振るわれる暴力全般を指します。ここでいう暴力には、以下のような多様な形態が含まれます。
- 身体的暴力
打撃や蹴り、殴打などの直接的な肉体的攻撃。 - 精神的・心理的暴力
言葉による暴言、侮辱、脅迫、支配的な態度など。 - 経済的暴力
被害者の経済的自立を妨げる行為、収入の管理や制限など。 - 性的暴力
同意のない性的行為や強制、性的嫌がらせなど。
被害者は、信頼していた相手から暴力を受けることで、心理的な裏切りやトラウマを抱える可能性が高く、状況がエスカレートしやすいのが特徴です。
2. 社会通念と構造的問題
2.1 社会的な寛容と経済的依存
- 歴史的背景
「夫が妻に暴力を振るうのはある程度仕方がない」といった社会通念が根強く存在していたことが背景にあります。 - 経済的格差
女性が収入を得にくい状況や、配偶者間の経済的依存関係が、暴力を個人の問題として片付けにくい構造的要因となっています。
2.2 潜在化しやすく、加害者の罪意識の低さ
- 隠蔽性
DVは「家庭内の問題」として扱われやすく、外部からその実態に気づかれにくい傾向があります。 - 加害者の罪意識の薄さ
加害者は自らの行動に対する罪の意識が薄く、初期段階での行為が見過ごされやすい結果、暴力がエスカレートし、被害が深刻化しやすいです。
3. 法制度とその現状
3.1 配偶者暴力防止法(DV防止法)
- 正式名称
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」 - 制定年
2001年に制定されました。
この法律は性別を限定せずに規定されていますが、実際には被害者の大半が女性である現状があります。これは、長年にわたるジェンダーに基づく権力関係や経済的格差が背景にあるためです。
4. デートDVとその問題点
4.1 デートDVの定義と特徴
- 定義
デートDVは、結婚や同居といった法的な枠組みが存在しない交際関係において発生する暴力行為を指します。 - 特徴
- 恋愛初期から、相手の行動を過剰に管理・制限するコントロール行為が見られる
- 精神的虐待や、場合によっては身体的暴力が含まれる
- 交際が公式なものになっていないため、被害の実態が外部に認識されにくい
4.2 問題点と新たなリスク
- 法的保護の不十分さ
結婚などの制度的枠組みがないため、現行の法制度が十分に対応できず、被害者が適切な保護を受けにくい。 - SNSやデジタル技術の悪用
SNSやスマートフォンを通じた監視、ストーキング、プライバシー侵害といった新たな暴力形態が出現している。 - 認識の甘さ
若い世代では「情熱」や「嫉妬深さ」が恋愛の一部と誤解され、初期のコントロール行為が暴力と認識されにくいという問題もあります。
5. 改善へのアプローチ
DVやデートDVの問題を改善するためには、以下の多角的なアプローチが必要です。
5.1 社会的啓発と教育
- 暴力を「個人の問題」として片付けず、ジェンダー不均衡や社会構造の問題として正しく認識するための教育・啓発活動を強化する。
- 学校教育やメディアを通じた正しい情報の発信が求められます。
5.2 支援体制の充実
- 被害者が安心して相談や支援を受けられる環境の整備が重要です。
- 相談窓口やシェルターの整備
- カウンセリングや法律相談のサービス提供
5.3 法制度の改善
- 配偶者暴力防止法や新たな暴力形態(デートDV等)に対応できるよう、法制度の見直しや補完的な法整備が必要です。
- 性別にとらわれず、すべての被害者が平等に保護される枠組みを目指す。
5.4 社会的態度の変革
- 暴力を正当化する文化や、被害者に対する偏見を根絶するため、社会全体で意識改革を行う必要があります。
- コミュニティやメディアが積極的に問題提起し、健全な人間関係の在り方を模索することが求められます。
まとめ
DVやデートDVは、単なる個人間の問題に留まらず、歴史的なジェンダー不均衡、経済的依存、社会通念など、さまざまな構造的要因が複雑に絡み合った現象です。
これらの問題に対しては、法制度の整備や支援体制の充実といった制度的対応だけでなく、社会全体の意識改革が必要不可欠です。
暴力が容認される風潮を根本から変えていくことで、被害の未然防止、早期発見、そして被害者の救済へとつなげる社会を目指すことが求められます。