社会のなかで最も価値が高いとされ、他の男性のあり方や女性を従える位置に置かれた男性像。社会学者レイウィン・コンネルが1980年代に提示した概念である。

「ヘゲモニー」はグラムシに由来する語で、暴力による支配ではなく、同意によって成り立つ支配を指す。ここが要点になる。この男性像は、強制されるのではなく、望ましいものとして共有されることで力を持つ。稼ぐこと、弱さを見せないこと、異性愛であること、感情を抑えること——それらは規則としてではなく、理想として流通する。

コンネルは、男性性はひとつではないと考えた。理想に届かない従属的な男性性、その恩恵だけを受け取る共犯的な男性性、人種や階級によって周縁に置かれた男性性。男性のあいだにも序列があり、多くの男性は理想の側にいるわけではない。それでも、この配置全体が女性の従属を支える構造として働く。

この概念が男性学にとって重要なのは、「男性は加害者か被害者か」という二択を外してくれるからである。理想に届かないことの苦しさは実在する。そして、その苦しさを抱えながら、同時に構造の恩恵を受けてもいる。両方が成り立つ、という見方を可能にする。

→男性学 →ホモソーシャル →ミソジニー

参考文献

  • R・W・コンネル『マスキュリニティーズ——男性性の社会科学』伊藤公雄訳、新曜社、2022年
  • R・W・コンネル『ジェンダーと権力——セクシュアリティの社会学』森重雄ほか訳、三交社、1993年
  • R. W. Connell & James W. Messerschmidt, “Hegemonic Masculinity: Rethinking the Concept,” Gender & Society, Vol.19 No.6, 2005

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