経済的・社会的に不利な立場にあると自認する男性を指す語。2000年代以降のネット言論のなかで広まった。収入や雇用の不安定さ、社会的な孤立、恋愛や結婚から遠ざけられている感覚などが、この語のもとで語られる。

指し示している困難は実在する。非正規雇用の男性、単身で高齢化していく男性、相談先を持たない男性——これらは統計にも現れる。にもかかわらず支援の枠組みが乏しいのは、男性は自力で稼ぎ、弱音を吐かないものだという前提が制度の側にあるからだ。その意味で、弱者男性が経験しているのは、性別役割分担の裏側である。

この語が論争的になるのは、しばしば女性差別との比較の文脈で使われるからだ。「女性は差別されているが、弱者男性は排除されている」という言い方もされる。だが差別と排除は排他的なものではないし、差別は悪意の有無ではなく生じた効果で測られる。比較そのものが、原因を見えなくすることがある。

同じ仕組みが、ある人には天井として、ある人には落とし穴として現れる。どちらが重いかを競うより、仕組みのほうを見たほうが早い。

→メンズライツ運動 →男性学 →有害な男らしさ →インセル・非モテ男性 →性別役割分担とは何なのか

参考文献

  • 川口遼ほか/日本の男性学関連論考(男性の孤立と支援の不在について)
  • 厚生労働省『自殺対策白書』(男女別・年齢別の自殺者数)
  • 田中俊之『男が働かない、いいじゃないか!』講談社+α新書、2016年

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