ジェンダー平等を専門部署の担当業務にとどめず、あらゆる政策の立案・実施・評価に組み込んでいくという方針。

打ち出されたのは1995年、北京で開かれた第4回世界女性会議である。それ以前の取り組みは、女性向けの施策を別立てで用意する形が主流だった。しかしそれでは、本体の政策——予算配分、都市計画、税制、災害対応——が男性を標準として設計されたまま残る。だから最初から全部に組み込め、というのがこの発想である。1997年には国連経済社会理事会が定義を示し、EUや各国の行政に広がった。日本の男女共同参画社会基本法(1999年)も、この流れを受けている。

具体的にどうするか。政策を作る段階でジェンダーへの影響を評価する。統計を性別で分けて取る。予算がどちらにどれだけ配分されているかを可視化する(ジェンダー予算)。避難所の設計、除雪の優先順位、道路の照明——一見中立に見える施策が、実際には誰の生活を前提にしているかを点検する作業である。

批判もある。よく指摘されるのが「蒸発(evaporation)」と呼ばれる現象だ。方針としては掲げられているのに、実施の段階になるとジェンダーの観点が薄れて消えてしまう。担当が全員になった結果、誰の仕事でもなくなる、という逆説である。専門部署が縮小された分だけ後退した、という指摘もある。

もうひとつは、技術的な手続きに落とし込まれることで、そもそも何のための平等かという問いが消えていくという批判である。チェックリストは埋まるが、権力の配分は動かない。

全部に組み込むという方針は、正しい。正しいがゆえに、どこにも見当たらなくなることがある。

→ジェンダー平等(gender equality) →エンパワーメント →パリテ →SRHR →ジェンダーギャップ指数

参考文献

  • 「北京宣言及び行動綱領」(第4回世界女性会議、1995年)
  • 大沢真理『生活保障のガバナンス——ジェンダーとお金の流れで読み解く』(有斐閣、2014年)
  • 内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書」各年版

この記事を書いた人