医療、教育、介護、住宅、公共交通といった生活の基盤となるサービスを、所得にかかわらず全員に現物で保障しようとする構想。日本では財政学者の井手英策が提唱している。
現金を配るベーシックインカムに対し、こちらはサービスそのものを配る。この違いは小さくない。現金給付は使い道を個人に委ねる一方、市場価格が上がれば実質的な価値が目減りする。医療費が高騰すれば、同じ額では同じ医療を受けられない。サービスを直接保障する設計は、この目減りを避けられる。
もうひとつの特徴は、対象を絞らないことである。所得制限を設けると、受給者と負担者が分断され、制度への支持が痩せていく。全員が受け取る仕組みなら、全員が当事者になる。井手はこの発想から、必要な財源を消費税を含む幅広い負担で賄うことを主張しており、そこが議論の分かれ目にもなっている。
なお、この構想は国家による普遍的給付を前提としており、当事者による共同管理を軸とするコモンとは、生活領域が重なっても処方箋が異なる。
→ ベーシックインカム/コモン/生活保護/ケアの倫理
参考文献
- 井手英策『幸福の増税論 財政はだれのために』岩波新書、2018年
- 井手英策『どうせ社会は変えられないなんてだれが言った?』小学館、2021年