人の生活を支え、その人が生きていける状態を保つための労働。育児、介護、看護、保育、障害のある人の支援などが含まれる。賃金の支払われるものと支払われないものの両方があり、その境目は制度によって引かれてきた。家庭で親を介護すれば無償、同じことを施設で行えば賃労働になる。
この労働には、いくつか共通する性質がある。相手がいなければ成り立たないこと、身体に触れることを含むこと、そして効率化がききにくいこと。工程を短縮すれば質が落ちる領域なので、生産性の向上によって賃金を上げるという道筋が、そもそも通らない。
賃金の低さには、もうひとつ理由がある。ケアはしばしば「愛情」や「向き不向き」の問題として語られる。すると、そこで発揮されている判断力や技術は、習得したものではなく性格として扱われ、評価の対象から外れてしまう。「優しいからできる」という言い方は、賛辞の形をした値引きでもある。
そして担い手は偏っている。国内では女性に、国際的には貧しい地域から豊かな地域へ移動する女性に。自国に子どもを残して他国の子どもを世話する、という連鎖が世界規模で生じている。誰かのケアが、別の誰かのケアの不足の上に成り立っているとき、それを解決と呼べるのか。この問いは、まだ開いたままである。
→感情労働 →アンペイドワーク →ケアの倫理
参考文献
- 上野千鶴子『ケアの社会学——当事者主権の福祉社会へ』太田出版、2011年
- 岡野八代『ケアの倫理——フェミニズムの政治思想』岩波新書、2024年
- ジョアン・C・トロント著、岡野八代訳・著『ケアするのは誰か?——新しい民主主義のかたちへ』白澤社、2020年