妊娠、出産、育児休業などを理由として、職場で不利益な扱いや嫌がらせを受けること。日本でつくられた言葉で、2010年代前半に広く使われるようになった。
現れ方は幅がある。退職を促す言動、降格や配置転換、契約の更新拒否といった処遇に関わるものと、「迷惑だ」「よく妊娠する気になったね」といった言葉によるものである。後者は制度上の不利益をともなわないため、記録に残りにくい。
法的な転機となったのは2014年の最高裁判決である。妊娠を理由とする降格は、男女雇用機会均等法に違反し原則として無効であるとされた。その後の法改正で、事業主には防止措置を講じる義務が課されている。
制度が整っても問題が消えないのは、原因が個々人の悪意だけにあるのではないからだ。人員に余裕のない職場では、誰かの休みが同僚の負担に直結する。そこで矛先が向くのは、体制ではなく休む本人になる。「迷惑をかけている」という感覚を当事者自身が内面化し、権利を使うことをためらう構図も生まれる。
制度の有無ではなく、制度を使っても責められない職場かどうか。そこが実際の分かれ目になる。
→マミートラック →性別役割分業 →アンペイドワーク
参考文献
- 最高裁判所第一小法廷判決 平成26年10月23日(広島中央保健生活協同組合事件)
- 厚生労働省「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント防止措置」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/
- 中野円佳『「育休世代」のジレンマ——女性活用はなぜ失敗するのか?』光文社新書、2014年