性別によって担う仕事を振り分ける社会のしくみ。「男は仕事、女は家庭」という形が典型だが、職場のなかでも、男性が意思決定を、女性が補助や接客を担うといった配分として現れる。
このかたちは、しばしば「昔からの自然な役割」として語られる。だが実際には、近代以降にできあがった比較的新しい編成である。産業化によって働く場所と暮らす場所が分かれ、賃金の支払われる労働と支払われない労働という区分が生まれた。日本で「夫が稼ぎ、妻が家庭を守る」核家族が広く成立したのは、高度経済成長期のことでしかない。それ以前、農家でも商家でも、女性は生産の現場にいた。
この分業を支えてきたのは、意識だけではなく制度でもある。配偶者控除や年金の第3号被保険者制度は、片方が働き、片方が家庭にいる世帯を前提として設計されてきた。制度が想定する家族像は、そこから外れる人——ひとり親、共働き、同性カップル、単身者——にとっては、静かな不利益として働く。
そして分業の一方の側は、賃金が支払われない。家事も育児も介護も、経済統計にほとんど現れないまま、誰かの時間で担われてきた。この見えなさこそが、ケアをめぐる議論の出発点にある。
→アンペイドワーク →ケアの倫理 →マミートラック
参考文献
- 落合恵美子『21世紀家族へ——家族の戦後体制の見かた・超えかた』第4版、有斐閣、2019年
- ジェンダー事典編集委員会編『ジェンダー事典』丸善出版、2024年
- 内閣府『男女共同参画白書』各年版 https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/