性差別と、それを支える構造をなくそうとする思想と運動の総称。「女性のための運動」と要約されがちだが、より正確には、性別を理由に誰かの生き方が狭められることをやめさせようとする営みである。だから、男性が「男らしさ」に縛られる問題も、その射程に入っている。
敵は男性ではない。性別によって人を配置し、そこから降りることを許さない仕組みのほうである。この点を取り違えると、フェミニズムは男女のいがみ合いに見えてしまう。
語としては19世紀末のフランスで使われはじめた。運動の歴史は、参政権を求めた第一波、私的領域にひそむ権力を問うた第二波、差異と多様性を軸にした第三波、SNSと#MeTooの第四波、という「波」の比喩で区分されることが多い。ただしこれは後からつけられた地図であり、波と波のあいだにも運動は途切れずに続いていた。
そしてフェミニズムは一枚岩ではない。リベラル、ラディカル、マルクス主義/社会主義、ブラック、エコ——立場によって、何を抑圧の根と見るかが違う。互いに批判し合ってきた歴史そのものが、この思想の厚みをつくっている。
→第二波フェミニズム →ラディカル・フェミニズム →リベラル・フェミニズム →家父長制(patriarchy) →性差別 →インターセクショナリティ入門
参考文献
- ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学』堀田碧訳、エトセトラブックス、2020年(原著 Feminism is for Everybody, 2000/新水社版2003年の復刊)
- 上野千鶴子『家父長制と資本制——マルクス主義フェミニズムの地平』岩波書店、1990年
- キンバリー・クレンショー「人種と性の交差点を脱周縁化する」(1989年、インターセクショナリティの初出論文)