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韓国におけるフェミニズムは、この10年で急速に注目を集め、社会運動としての影響力を強めてきました。その背景には、韓国特有の社会構造、過去の女性運動の蓄積、そしてソーシャルメディアの爆発的な発展が大きく関係しています。本記事では、韓国でフェミニズムが注目される理由、その傾向、さらにソーシャルメディアが果たした役割について深掘りしていきます。

1. 韓国でフェミニズムが注目される理由

1-1. 深刻なジェンダー不平等

韓国はOECD諸国の中でもジェンダーギャップが大きい国の一つです。特に経済・政治分野での男女格差が顕著で、2023年の世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ指数」では、韓国は146カ国中99位と低い評価を受けました。特に男女間の賃金格差や管理職・政治家としての女性の割合の低さが問題視されています。

また、韓国社会では家父長制の文化が根強く残り、女性に伝統的な役割を求める圧力が強いこともフェミニズムの関心を高める要因となっています。

1-2. 「#MeToo運動」とその影響

韓国では2018年の「#MeToo運動」が社会に大きなインパクトを与えました。高位公職者や著名人による性的暴行の告発が相次ぎ、社会全体で性暴力に対する認識が急速に変化しました。この動きが、より多くの女性をフェミニズムへと引き寄せる契機となりました。

1-3. 「n番部屋事件」とデジタル性暴力問題

2020年に発覚した「n番部屋事件」では、テレグラム上で女性や未成年の性的搾取が組織的に行われていたことが明らかになり、韓国社会に大きな衝撃を与えました。この事件をきっかけにデジタル性犯罪への関心が高まり、法改正を求める動きが活発化しました。フェミニズム運動はこの問題を告発し、政府や司法の対応の遅れを批判する大きな役割を果たしました。

2. 韓国フェミニズムの傾向と特徴

2-1. 「ラディカルフェミニズム」とその台頭

韓国のフェミニズム運動は、ラディカルな側面を持つことが特徴的です。これは、

  • 女性専用スペースの確保
  • 異性愛中心主義からの脱却
  • ミソジニー(女性蔑視)に対する徹底した対抗
    といった要素を含んでおり、特に若い女性の間で支持を得ています。

2-2. 「脱コルセット運動」

「脱コルセット運動(탈코르셋)」は、韓国社会における女性のルッキズム(外見至上主義)に対する抵抗として生まれました。化粧や整形をやめることによって、女性が社会的に課せられた「美の基準」から解放されることを目指す運動です。

この運動はSNSを通じて拡散され、特に10代・20代の女性の間で支持を集めました。一方で、男性や保守層からの強い反発を受け、フェミニストに対するヘイトも増加しました。

2-3. 男性フェミニズムへの反発と「嫌フェミ文化」

韓国では「反フェミニズム」の動きも強く、「嫌フェミ(アンチフェミ)」と呼ばれる文化が存在します。これは、特に若い男性を中心に「フェミニズム=男性差別」という認識が広がっていることに由来しています。韓国社会では男性の兵役義務があり、男性たちは「女性の方が優遇されている」と考えることが多く、フェミニズム運動に強い反発を示す傾向があります。

3. ソーシャルメディアの影響

3-1. SNSによる運動の拡散

韓国フェミニズムは、Twitter、Instagram、YouTubeなどのSNSを通じて急速に広まりました。特にTwitterは、ハッシュタグを活用してフェミニズム運動を拡散する主要なプラットフォームとして機能しました。

  • 「#내몸내가(私の体は私のもの)」:リプロダクティブ・ライツ(生殖権)を訴える運動
  • 「#탈코르셋(脱コルセット)」:美の基準に対する反抗
  • 「#미투(#MeToo)」:性暴力を告発する運動

3-2. YouTubeフェミニズムとオルタナティブメディア

韓国では、YouTube上でフェミニズムを発信するクリエイターが増えています。

  • Banny Park(배리 박):韓国のフェミニズムや社会問題を扱うYouTuber。
  • FEMTOON(페미툰):フェミニズムをテーマにしたウェブトゥーン(Web漫画)を発信。
  • Dazed Korea や 여성신문(女性新聞):YouTubeチャンネルでフェミニズムに関する動画を公開。

3-3. 韓国フェミニズムとオンラインハラスメント

韓国ではフェミニスト女性に対するオンラインハラスメントが深刻な問題となっています。特にYouTubeやTwitterではフェミニズムに関する発言をした女性が標的となることが多く、インターネット上の「狩り文化」が問題視されています。

4. まとめ

韓国フェミニズムは、ジェンダー不平等やデジタル性暴力への反発を背景に急速に発展しました。その中心には、SNSやYouTubeといったソーシャルメディアの存在があり、運動の拡散や議論の場として機能しています。

一方で、反フェミニズムの動きやオンラインハラスメントなど、課題も山積しています。今後、韓国フェミニズムがどのような方向へ進んでいくのか、ソーシャルメディアが果たす役割はさらに重要になるでしょう
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