哲学者、作家。パリ生まれ。ソルボンヌで哲学を学び、1929年の教員資格試験に次席で合格した(首席はジャン゠ポール・サルトル)。以後サルトルとは生涯にわたる契約的な関係を結び、婚姻や同居という形式によらない関係のあり方を実践した。

1949年の『第二の性』は、女性が「第二の性」=男性を基準とした他者として位置づけられてきた歴史を、生物学・精神分析・史的唯物論・文学と横断的に検証した大著である。冒頭近くに置かれた「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という一文は、生まれつきの性質とされてきた女らしさが、社会のなかで作られていく過程であることを示した。この一文が、のちのジェンダー概念の土台になっている。1954年には小説『レ・マンダラン』でゴンクール賞。1971年には自身の中絶経験を公表する「343人のマニフェスト」に名を連ね、フランスの中絶合法化を後押しした。

批判もある。白人中産階級の女性を暗黙の基準としていること、母性や女性の身体を否定的に描きすぎていること。ジュディス・バトラーは先の一文を引き継ぎながら、「女になる」以前に「女」という区分そのものが作られていると論を進めた。

作られたものだと知ることと、そこから自由になることのあいだには、まだ距離がある。その距離を測る道具を最初に用意した人である。

→ジェンダー(gender) →第二波フェミニズム(second-wave feminism) →ジュディス・バトラー →本質主義・構築主義

参考文献

  • シモーヌ・ド・ボーヴォワール『決定版 第二の性』I・II(『第二の性』を原文で読み直す会訳、河出文庫、2023年)
  • シモーヌ・ド・ボーヴォワール『レ・マンダラン』(朝吹登水子・二宮フサ訳、河出書房新社)
  • 井上たか子ほか編『ボーヴォワール『第二の性』を読む』(青弓社、2011年)

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