詩人、エッセイスト。ニューヨーク・ハーレム生まれ。両親はカリブ海のグレナダからの移民。自らを「黒人であり、レズビアンであり、母であり、戦士であり、詩人である」と規定し、そのどれか一つを選べという要求そのものを拒み続けた。

1984年のエッセイ集『シスター・アウトサイダー』に収められた講演で、彼女は白人フェミニストたちに向けてこう述べた——主人の道具を使って主人の家を壊すことはできない。抑圧の構造そのものが作った枠組みのなかで平等を求めても、構造は揺るがない、という指摘である。差異を消して連帯するのではなく、差異を認めたうえで組み替えることを求めた。

1978年に乳がんと診断され、その経験を『がん日記』に書いた。病を「克服の物語」にせず、沈黙こそが自分を守らないと記したこの本は、闘病記の枠を超えて読まれている。晩年のエッセイに出てくる、自分を大事にすることは自己耽溺ではなく自己保存であり、それ自体が political warfare(政治的な戦い)なのだという一節は、のちにセルフケアという語が広まる際にくり返し引かれた。1992年、肝転移により死去。

彼女が残した問いは、いまも有効である。あなたを黙らせているものは何か。そして、黙っていれば安全だと、誰があなたに思わせたのか。

→インターセクショナリティ →セルフケア →フェミニズム(feminism) →特権

参考文献

  • オードリー・ロード『シスター・アウトサイダー』(岸まどか訳、エトセトラブックス、2022年)
  • オードリー・ロード『ザミ——私の名前の新しい綴り』(管啓次郎訳、勁草書房、1991年)
  • オードリー・ロード『がん日記』(伊藤比呂美訳、明石書店、2000年)

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