自分の性別をどのように認識しているか、という自己の感覚。「女である」「男である」「どちらでもない」など、その内容はさまざまである。他者から見た性別とも、出生時に割り当てられた性別とも、必ずしも一致しない。

訳語をめぐる問題がある。「自認」という日本語は、しばしば「自分でそう思っているだけ」という含みで読まれてしまう。だが原語の gender identity が指すのは、その日に選び取れる意見ではなく、アイデンティティ——自分がどう在るかという層である。近年は「ジェンダーアイデンティティ」とカタカナで表記する例も増えており、2023年のLGBT理解増進法では、審議の過程で「性自認」からこの表記へと変更された経緯がある。訳語の選択そのものが、政治的な争点になってきた。

法制度の側でも変化が続いている。2023年10月、最高裁大法廷は性同一性障害特例法の生殖不能要件を違憲と判断した。性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けることは、個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益である、という理由からである。

ただし国会はこれを受けた法改正を行っておらず、決定は宙に浮いたままになっている。もうひとつの要件である外観要件については、手術なしで性別変更が認められた例もあれば、認められない例もあり、判断は個々の裁判所に委ねられている。トランス女性にとって、手術によらない戸籍変更が可能かどうかは、いまも見通しの立たない状態にある。

→シスジェンダー →トランスジェンダー →セックス

参考文献

  • 周司あきら・高井ゆと里『トランスジェンダー入門』集英社新書、2023年
  • 最高裁判所大法廷決定 令和5年10月25日(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号 違憲決定)
  • LGBT法連合会「【声明】性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の3条1項4号規定を憲法違反と判断する最高裁判所の決定について」https://lgbtetc.jp/news/2931/

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