フェミニズムの言葉が新自由主義に取り込まれ、解放の要求が個人の自己管理へと置き換えられた状態を指す批判的な呼び名。キャサリン・ロッテンバーグが2014年の論文で定式化した。

ここでの「エンパワメント」は、構造を変えることではなく、自分を磨き、仕事と家庭のバランスをとり、折れない心を保つことを意味する。差別が残っていても、乗り越えられるかどうかは本人の力量の問題になる。企業のダイバーシティ施策や女性を応援する広告も同じ回路にある。平等は再分配の課題ではなく、個人の成功物語として語られる。

ナンシー・フレイザーは、第二波フェミニズムの批判が資本主義の新しい段階に燃料を供給してしまったと論じた。日本では菊地夏野が「女子力」や女性活躍推進の語りを分析し、ネオリベラル・ジェンダー秩序と呼んでいる。

この枠組みが見えにくくするのは、誰かの「活躍」を支える無償・低賃金のケア労働である。ロッテンバーグは、女性が二層に分けられると指摘する。資本を高める価値ある女性と、その生活を回すために使い捨てられる女性と。

→リーン・イン・フェミニズム →ポストフェミニズム →リベラル・フェミニズム →社会的再生産 →グローバル・ケア・チェーン →ケアの倫理

## 参考文献

  • Catherine Rottenberg「The Rise of Neoliberal Feminism」『Cultural Studies』28巻3号、2014年、418–437頁
  • Catherine Rottenberg『The Rise of Neoliberal Feminism』Oxford University Press、2018年
  • Nancy Fraser「How feminism became capitalism’s handmaiden — and how to reclaim it」The Guardian、2013年10月14日 https://www.theguardian.com/commentisfree/2013/oct/14/feminism-capitalist-handmaiden-neoliberal
  • 菊地夏野『日本のポストフェミニズム——「女子力」とネオリベラリズム』大月書店、2019年
  • シンジア・アルッザ、ティティ・バタチャーリャ、ナンシー・フレイザー『99%のためのフェミニズム宣言』惠愛由訳、菊地夏野解説、人文書院、2020年

この記事を書いた人