権利の獲得が進んだあとに起きる、揺り戻しの反動を指す。前進があったからこそ反発が生まれるという順序が、この語の含意である。何も動いていないところに、バックラッシュは起こらない。

この語をフェミニズムの文脈に定着させたのは、ジャーナリストのスーザン・ファルーディの『バックラッシュ』(1991年)である。1980年代のアメリカで、「女性の社会進出が不幸を招いた」という物語がメディアや専門家の言説を通じて広められていく過程を、ファルーディは具体的に追跡した。攻撃は正面からの反対としてではなく、女性を心配する語り口をまとって現れる。それがこの現象の厄介なところだ。

日本では、2000年代前半の動きが典型として挙げられる。男女共同参画社会基本法(1999年)の成立後、「ジェンダーフリー」という言葉が集中的に攻撃され、自治体の条例や男女共同参画センターの事業、学校の性教育が標的となった。用語の使用が行政レベルで制限される事態も生じている。運動の側が何を主張したかよりも、切り取られた言葉が独り歩きした点に、この時期の特徴がある。

近年は、反ジェンダー運動として国境を越えたネットワークを持つようになった。中絶へのアクセス、性教育、トランスジェンダーの権利が主な標的で、宗教右派や排外主義の言説と結びついて広がっている。

揺り戻しは、運動が失敗した証ではなく、届いた証でもある。だとすれば、届いたあとに何が必要になるのだろうか。

→包括的性教育とバックラッシュ →宗教右派 →第四波フェミニズム(fourth-wave feminism) →ポストフェミニズム →男女共同参画運動と、男女共同参画社会基本法

参考文献

権利の獲得が進んだあとに起きる、揺り戻しの反動を指す。前進があったからこそ反発が生まれるという順序が、この語の含意である。何も動いていないところに、バックラッシュは起こらない。

この語をフェミニズムの文脈に定着させたのは、ジャーナリストのスーザン・ファルーディの『バックラッシュ』(1991年)である。1980年代のアメリカで、「女性の社会進出が不幸を招いた」という物語がメディアや専門家の言説を通じて広められていく過程を、ファルーディは具体的に追跡した。攻撃は正面からの反対としてではなく、女性を心配する語り口をまとって現れる。それがこの現象の厄介なところだ。

日本では、2000年代前半の動きが典型として挙げられる。男女共同参画社会基本法(1999年)の成立後、「ジェンダーフリー」という言葉が集中的に攻撃され、自治体の条例や男女共同参画センターの事業、学校の性教育が標的となった。用語の使用が行政レベルで制限される事態も生じている。運動の側が何を主張したかよりも、切り取られた言葉が独り歩きした点に、この時期の特徴がある。

近年は、反ジェンダー運動として国境を越えたネットワークを持つようになった。中絶へのアクセス、性教育、トランスジェンダーの権利が主な標的で、宗教右派や排外主義の言説と結びついて広がっている。

揺り戻しは、運動が失敗した証ではなく、届いた証でもある。だとすれば、届いたあとに何が必要になるのだろうか。

→包括的性教育とバックラッシュ →宗教右派 →第四波フェミニズム(fourth-wave feminism) →ポストフェミニズム →男女共同参画運動と、男女共同参画社会基本法

参考文献

  • スーザン・ファルーディ『バックラッシュ——逆襲される女たち』伊藤由紀子・加藤真樹子訳、新潮社、1994年(原著1991年)
  • 山口智美・斉藤正美・荻上チキ『社会運動の戸惑い——フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』勁草書房、2012年

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