男性が直面する不利益の是正を掲げる運動。マスキュリズムとも呼ばれる。離婚後の親権や面会交流、労働災害死や自殺率の男女差、男性のDV被害の見えにくさなどを論点とする。
指摘そのものには、事実にもとづくものが少なくない。日本の自殺者数は長く男性が女性の約2倍で推移してきたし、労働災害の死亡者も圧倒的に男性に偏っている。親権が母親に集中する傾向も統計として存在する。
問題は、その説明のしかたにある。この運動の一部は、これらを「フェミニズムが男性から奪った結果」として語る。だが、危険な仕事に男性が配置されるのも、弱音を吐けないのも、育児は母親のものと決めつけられるのも、どれも同じ性別役割分担から出てきている。フェミニズムが批判してきたのは、まさにその分担のほうである。原因を取り違えているのだ。
そのため、この運動は二つの方向に分かれて見える。男性が背負わされたものを降ろそうとする方向と、女性が得たものを取り返そうとする方向。前者は男性学と重なり、後者はミソジニーやアンチフェミニズムと重なっていく。
男が損をしていると言うとき、誰に損をさせられたと言っているのか。そこが分岐点になる。
→男性学 →有害な男らしさ →弱者男性 →性別役割分担とは何なのか →ミソジニー →マスキュリズム
参考文献
- 田中俊之『男性学の新展開』青弓社ライブラリー、2009年
- 多賀太『男らしさの社会学——揺らぐ男性のライフコース』世界思想社、2006年
- 厚生労働省『自殺対策白書』(男女別自殺者数の推移)