性別によって担う仕事をあらかじめ割り振る社会のしくみ。「男は仕事、女は家庭」という言い方に代表される。近代の工業化で職場と家庭が切り離されたとき、賃金の出る仕事を男性に、家事・育児・介護といった無償のケアを女性に割り当てる形が広がった。日本では高度経済成長期の企業社会のもとで定着し、配偶者控除や年金の第3号被保険者など、専業主婦のいる世帯を標準とする制度がこれを支えてきた。共働き世帯が多数となった現在も、女性が仕事と家事の両方を担う「新・性別役割分業」として、形を変えて続いている。
この分業は女性だけを縛るものではない。男性は「稼ぎ手」であることを求められ、長時間労働や転勤を断りにくく、家族を養えなければ一人前とみなされない。その結果、子育てや介護から遠ざけられ、過労死という極端な帰結も生んできた。ただし、縛られ方は対称ではない。賃金と社会的地位は男性の側に集まり、女性は経済的に誰かに頼らざるをえない立場に置かれやすい。分業を「お互いさま」で片づけず、誰がケアを担い、誰に賃金が支払われるのかという問いとして見直すことが求められている。
→家父長制 →ケアワーク →アンペイドワーク →マミートラック →ヘゲモニックな男性性 →男女共同参画 →トラッドワイフ
参考文献
- 上野千鶴子『家父長制と資本制——マルクス主義フェミニズムの地平』岩波書店、1990年
- 大沢真理『企業中心社会を超えて——現代日本を〈ジェンダー〉で読む』時事通信社、1993年
- 落合恵美子『21世紀家族へ——家族の戦後体制の見かた・超えかた』有斐閣、1994年
- 田中俊之『男性学の新展開』青弓社、2009年
- 内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書」https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/