評論家、社会主義者、行政官。東京生まれ。女子英学塾(現・津田塾大学)卒。日本におけるマルクス主義フェミニズムの先駆者である。
1910年代後半、『青鞜』誌上の論争に加わり、伊藤野枝と公娼制度をめぐって応酬した。伊藤が廃娼運動を偽善的だと批判したのに対し、山川は、娼妓の存在は個人の道徳の問題ではなく、貧困と資本主義と家父長制が生み出す構造の問題であると論じた。この視点——女性の抑圧を、性差別と階級の両面から同時に見る——が彼女の生涯の軸になる。1921年には日本初の社会主義女性団体・赤瀾会の結成に関わった。
戦時中は沈黙を強いられ、農村での生活を経て、戦後の1947年、労働省の初代婦人少年局長に就任した。理論家が制度をつくる側に回った稀な例である。母と祖母の生を記録した『おんな二代の記』、江戸期の武家女性の暮らしを描いた『武家の女性』など、生活史の書き手としても優れていた。
没後、その名を冠した山川菊栄賞(山川菊栄記念婦人問題研究奨励金)が設けられ、女性史・女性問題研究の分野で長く受賞作を送り出してきた。
一世紀前に彼女が示した「差別を一つの原因に還元しない」という構えは、今日の言葉でいえば交差的な視点にきわめて近い。
→マルクス主義フェミニズム/社会主義フェミニズム →伊藤野枝 →セックスワーク(sex work) →第一波フェミニズム(first-wave feminism)
参考文献
- 山川菊栄『おんな二代の記』(岩波文庫、2014年)
- 山川菊栄『武家の女性』(岩波文庫、1983年)
- 鈴木裕子編『山川菊栄評論集』(岩波文庫、1990年)