どのような性別の人に恋愛的・性的にひかれるか、あるいはひかれないかという、持続的な傾向を指す。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、ヘテロセクシュアル、アセクシュアルといった言葉は、この軸の上に並ぶ。

「指向」という訳語が選ばれていることには理由がある。英語のorientationは、preference(好み)でもtendency(癖)でもない。趣味や選択の問題として扱われてきた歴史への、意識的な言い換えである。日本語でも「性的嗜好」と混同されることがあるが、両者は別の概念として区別される。

医学の側も立場を変えてきた。アメリカ精神医学会は1973年に同性愛を精神障害の診断分類から削除し、WHOも1990年に国際疾病分類から除外した。日本でも1990年代に同様の対応がとられている。それでも、性的指向を「治す」と称する転向療法(コンバージョン・セラピー)は各地に残り、その有害性を理由に禁止する国が増えている。

性的指向は、性自認(自分の性別をどう認識しているか)とは別の軸である。この二つを合わせてSOGIと呼ぶ枠組みが近年広く使われるようになった。「LGBT」が特定の人びとを名指すのに対し、SOGIは誰もが持つ属性として性を記述する。当事者と非当事者を分ける線の引き方が変わる。

ただし、ひとつ考えておきたいことがある。権利の主張は「生まれつきだから変えられない」という論法に支えられてきた面がある。それは有効な戦略だったが、では選び取られた性のあり方は、守られるに値しないのだろうか。

→セクシュアリティ →性的マイノリティとして生きること──LGBTQIA、SOGI、社会との関わり →ホモフォビア(homophobia) →ヘテロノーマティビティ →トランスジェンダー

参考文献

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