黒人女性の経験を出発点とし、人種差別と性差別、そして階級を切り離さずに捉えようとする思想と運動。奴隷制下の女性の言葉にまでさかのぼる系譜を持つが、理論として輪郭を得たのは1960〜70年代のアメリカである。公民権運動は黒人男性を、女性解放運動は白人中産階級の女性を、それぞれ標準的な主体として想定していた。どちらの運動のなかにも自分の居場所がない、という経験が、この潮流を生んだ。
1974年に結成されたコンバヒーリバー・コレクティヴは、黒人レズビアン・フェミニストを中心とする集団だった。1977年の宣言で示されたのは、抑圧はそれぞれ独立して存在するのではなく、連動して働くという認識である。そして「黒人女性が自由であるならば、それは他のすべての人が自由であることを意味する」——最も周縁に置かれた立場から解放を構想する、という発想の転換だった。
ベル・フックスは、フェミニズムを「性差別的な抑圧を終わらせる運動」と定義し直した。誰が主語であるかではなく、何を終わらせるのかを問う。この定義の組み替えは、フェミニズムを特定の集団の運動から解き放つ試みでもあった。
日本で読むとき、アメリカの人種構造をそのまま置き換えることはできない。だが、複数の軸が同時に働いている場所から考える、という方法そのものは、ここでも使える。
→インターセクショナリティ →トランスフェミニズム
参考文献
黒人女性の経験を出発点とし、人種差別と性差別、そして階級を切り離さずに捉えようとする思想と運動。奴隷制下の女性の言葉にまでさかのぼる系譜を持つが、理論として輪郭を得たのは1960〜70年代のアメリカである。公民権運動は黒人男性を、女性解放運動は白人中産階級の女性を、それぞれ標準的な主体として想定していた。どちらの運動のなかにも自分の居場所がない、という経験が、この潮流を生んだ。
1974年に結成されたコンバヒーリバー・コレクティヴは、黒人レズビアン・フェミニストを中心とする集団だった。1977年の宣言で示されたのは、抑圧はそれぞれ独立して存在するのではなく、連動して働くという認識である。そして「黒人女性が自由であるならば、それは他のすべての人が自由であることを意味する」——最も周縁に置かれた立場から解放を構想する、という発想の転換だった。
ベル・フックスは、フェミニズムを「性差別的な抑圧を終わらせる運動」と定義し直した。誰が主語であるかではなく、何を終わらせるのかを問う。この定義の組み替えは、フェミニズムを特定の集団の運動から解き放つ試みでもあった。
日本で読むとき、アメリカの人種構造をそのまま置き換えることはできない。だが、複数の軸が同時に働いている場所から考える、という方法そのものは、ここでも使える。
→インターセクショナリティ →トランスフェミニズム
参考文献
- ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの——情熱の政治学』堀田碧訳、エトセトラブックス、2020年
- キアンガ=ヤマッタ・テイラー編『コンバヒーリバー・コレクティヴ宣言——ブラックフェミニズムをつくってきた黒人女性たちは語る』Political Feelings Collective訳、花伝社、2026年
- パトリシア・ヒル・コリンズ、スルマ・ビルゲ『インターセクショナリティ』小原理乃訳、下地ローレンス吉孝監訳、人文書院、2021年