哲学者。アメリカ・クリーヴランド生まれ。カリフォルニア大学バークレー校大学院特別教授。専門は哲学、ジェンダー/クィア理論、批評理論。

『ジェンダー・トラブル』(1990年)で示したのが、パフォーマティビティという考え方である。ジェンダーは、内側にある本質が外に表れたものではない。「女らしい」「男らしい」とされるふるまいを反復するうちに、その反復の効果として、あたかも内側に本質があったかのように見えてくる——順序が逆なのだ、と読み替えた。

さらにバトラーは、セックス(生物学的性)とジェンダー(社会的性)という区分そのものを問い直す。身体をどう区切り、何を性別の指標とするかはすでに言説の産物であり、セックスもまた文化の外にはない。この議論は『問題=物質となる身体』(1993年)で展開された。

2000年代以降は、誰の生が悼まれ、誰の生が悼まれないのかという生の不平等な配分、そして非暴力や連帯の問題へと関心を広げている。2024年の『Who’s Afraid of Gender?』では、世界各地で拡大する反ジェンダー運動を、不安を集めて別の対象に置き換える装置として分析した。

バトラー自身はノンバイナリーであることを公にし、英語ではthey/themの代名詞を用いている。

「女」というカテゴリーを疑うことは、フェミニズムの足場を崩すことなのか。それとも、その足場をより広く取り直すことなのか。この問いは、いまも開かれたままである。

→性別とパフォーマティビティ →セックスもジェンダーである──私たちはどのように男女を演じているのか →ヘテロノーマティビティ →クィア・スタディーズとは何か →本質主義・構築主義

参考文献

  • ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル——フェミニズムとアイデンティティの攪乱』竹村和子訳、青土社、1999年(原著1990年/新装版2018年)
  • ジュディス・バトラー『問題=物質となる身体——「セックス」の言説的境界について』佐藤嘉幸ほか訳、以文社、2021年(原著1993年)
  • Judith Butler, Who’s Afraid of Gender?, Farrar, Straus and Giroux, 2024
  • みすず書房 著者ページ「ジュディス・バトラー」https://www.msz.co.jp/book/author/ha/7566/

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