身体の性差に社会が意味を与え、それを秩序として編成していくはたらきのこと。もとは名詞の性を指す文法用語だったが、1950年代の性科学が生物学的性(sex)と社会的な性役割を区別するために転用し、1970年代のフェミニズムがこれを引き継いだ。

決定的だったのは歴史学者ジョーン・W・スコットの定式化である。彼女はジェンダーを「肉体的差異に意味を付与する知」と呼び、同時にそれが権力関係を表現する第一義的な方法だと述べた。つまりジェンダーは、男女という分類の説明ではなく、その分類がどう作られ、誰に何を配分しているかを見るための道具である。

その後、生物学的性そのものも社会的な解釈を経て初めて「見える」のではないか、というジュディス・バトラーらの問いによって、sex/genderの二分法自体が揺さぶられた。

誰がケアを担うことになっているのか。その配分を「自然」と見せているものは何か。ジェンダーは、その問いを立てるための最初の足場である。

→ ジェンダー平等/ジェンダーバイアス/本質主義・構築主義

参考文献

  • ジョーン・W・スコット『ジェンダーと歴史学』荻野美穂訳、平凡社、1992年(増補新版:平凡社ライブラリー、2004年)
  • ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル』竹村和子訳、青土社、1999年

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