年長の男性が財産と権力を握り、女性および若年男性を支配する体制。ギリシャ語のpatēr(父)に由来し、もとは家長の支配を指したが、フェミニズム理論はこれを社会全体を貫く構造として捉え直した。
日本では明治民法(1898年施行)が「家」制度を法制化し、戸主に家族の婚姻や居所を決める権限を与えた。この制度は1947年の民法改正で廃止されている。にもかかわらず、戸籍制度、夫婦同氏の原則、男系による皇位継承といった形で、その構成原理は現在も残る。
上野千鶴子は、家父長制を資本制と並ぶもうひとつの支配のシステムとして分析し、家庭内の不払い労働が経済をいかに支えているかを論じた。
注意したいのは、家父長制は男性一般を利する仕組みではないことだ。権力は年長で特定の条件を満たす男性に集中し、それ以外の男性もまた序列の下位に置かれる。「男性対女性」の図式に還元すると、この構造は見えなくなる。
パトリアーキと片仮名で表記されることもある。日本語では「男尊女卑」と重ねて語られることが多いが、個人の意識だけでなく制度や慣行のかたちで働く点で、より広い概念である。
→ ホモソーシャル/ミソジニー/性別役割分担/ジェンダー
**参考文献**
– 上野千鶴子『家父長制と資本制 マルクス主義フェミニズムの地平』岩波書店、1990年(岩波現代文庫、2009年)
– 牟田和恵『戦略としての家族 近代日本の国民国家形成と女性』新曜社、1996年
– 法務省「戸籍制度に関するQ&A」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji86.html