1990年代から2000年代にかけての潮流。第二波が前提とした「女性」という主語そのものを問い直したところに特徴がある。
きっかけのひとつは、1992年にレベッカ・ウォーカーが雑誌『Ms.』に寄せた文章で、彼女はそこで自らを第三の波だと名乗った。背景には、第二波が語ってきた「女性の経験」が、実際には白人・中産階級・異性愛の女性のものに偏っていたという批判がある。ブラック・フェミニズムやインターセクショナリティの視点が理論の中心に入り、ジュディス・バトラーは、ジェンダーは内面にある本質ではなく反復される行為であると論じた。
音楽シーンのライオット・ガール、性を否定せず語り直すセックス・ポジティブな態度など、文化的な表現と結びついたのもこの時期の特色である。第二波が「女らしさ」を強いられたものとして退けたのに対し、第三波はそれを引き受け直したり、遊んでみせたりする道を選んだ。
一方で、個人の選択や自己表現を重んじる姿勢は、市場や自己責任の論理に取り込まれやすかった。選ぶ自由が、選べる者だけの自由になっていないか。この問いは次の波にも持ち越される。
→第二波フェミニズム(second-wave feminism) →第四波フェミニズム(fourth-wave feminism) →インターセクショナリティ(intersectionality) →ジュディス・バトラー →本質主義・構築主義
### 参考文献
– ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル——フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(竹村和子訳、青土社、1999年/新装版2018年)
– 菊地夏野『日本のポストフェミニズム——「女子力」とネオリベラリズム』(大月書店、2019年)
– 清水晶子『フェミニズムってなんですか?』(文春新書、2022年)