文学研究者。オハイオ州デイトン生まれ。デューク大学、のちニューヨーク市立大学で教えた。クィア理論という分野を成り立たせた一人である。
1985年の『男同士の絆』で提示したのが、ホモソーシャルという概念だった。男性同士の強い結びつきは、同性愛への嫌悪(ホモフォビア)によって「性愛ではない」と絶えず線を引かれ、同時に女性を媒介として——女性を交換したり、値踏みしたりすることを通じて——確認される。男性のあいだの絆と、女性の従属と、同性愛嫌悪は、別々の現象ではなく一つの装置なのだという読み解きである。イギリス文学の読解から出てきた概念だが、現在では職場やSNSの分析にまで使われている。
1990年の『クローゼットの認識論』では、同性愛/異性愛という区分が、19世紀末以降の西洋文化のあらゆる知の枠組みに埋め込まれていることを論じた。晩年は感情や情動をめぐる研究に向かい、「暴くこと」を主眼とする批評から、修復的な読みへと軸を移している。1996年に乳がんの診断を受け、2009年に死去した。
線を引くことで守られている関係とは、いったい何を守っているのだろうか。
→ホモソーシャル(ホモソ)(homosocial) →ホモフォビア(homophobia) →ミソジニー(misogyny) →ヘテロノーマティビティ
参考文献
- イヴ・K・セジウィック『男同士の絆——イギリス文学とホモソーシャルな欲望』(上原早苗・亀澤美由紀訳、名古屋大学出版会、2001年)
- イヴ・K・セジウィック『クローゼットの認識論——セクシュアリティの20世紀』(外岡尚美訳、青土社、1999年/新装版2018年)